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国民一人ひとりに番号を割りあて、社会保障や所得の把握に役立てる共通番号制の導入に向けて、作業が進んでいる。6月末の大綱策定を経て、いまは各地でシンポジウムを開き、意見を聞いている。2015年[記事全文]
広げた大風呂敷を、しれっとたたむ。前言撤回も何のその。この展開は、鳩山政権の「普天間問題」によく似ている。野田政権が、前内閣で閣議決定し、具体化に動き出した政府の出先機[記事全文]
国民一人ひとりに番号を割りあて、社会保障や所得の把握に役立てる共通番号制の導入に向けて、作業が進んでいる。6月末の大綱策定を経て、いまは各地でシンポジウムを開き、意見を聞いている。2015年からの導入を目指す。
番号制度をめぐっては、個人情報を政府が一手に管理することへの懸念から、なかなか議論が進まなかった。今回は、当面の利用分野を年金、医療、介護保険、福祉、労働保険、税務の6分野に限る。
情報漏れや悪用を防ぐため、情報は分野ごとに分散して管理し、表には出ない数字でつなげる。自分の情報にどんなアクセスがあったかもインターネットなどで確認でき、不審な点は申し立てができるようにする。
少子高齢化で国民負担の増加が避けられないなか、社会保障給付や税制をできるだけ公平に効率よく適用することは不可欠だ。インフラとしてのITを使わない手はない。
共通番号制の導入で、医療や介護、子育てなどにかかる自己負担額の合計に、世帯の収入に応じた上限を設ける仕組みの創設などが考えられている。
また、東日本大震災の経験から、災害時の預金の払い戻しや保険金の支払いなどにも共通番号が使えるようにする。使い勝手などを確かめたうえで、2018年をめどに利用範囲の拡大も検討する方針だ。
とはいえ、番号の運営をどの官庁が担うのか、当初は医療情報をどこまで扱うことにするのか、など詰めるべき点はまだ多い。政府は早ければ今月召集の臨時国会にも法案を提出するとしてきたが、拙速は禁物だ。
国民や自治体の意見を十分に聞き、納得のいく制度にしないと、住民基本台帳ネットワークのように、利用範囲が狭く、使えない制度になってしまう。
とりわけ、制度の運用を監視する第三者機関については、できるだけ独立性を高めるよう法律で明確に定めてほしい。
政府内には、政治の関与を重視する声もあるが、大臣所管の省庁自体が監視の対象となることから考えても、公正取引委員会のように内閣からの独立が法的に保障される「3条委員会」とするべきだ。必要な調査や命令が出せる強い権限も、持たせたい。
個人情報が国境を越えて流通する時代だ。欧州連合(EU)は、十分な保護の仕組みがない国へのデータ移管を禁止している。国際社会への対応からも、最高レベルの独立性をもつ監視機関が求められる。
広げた大風呂敷を、しれっとたたむ。前言撤回も何のその。この展開は、鳩山政権の「普天間問題」によく似ている。
野田政権が、前内閣で閣議決定し、具体化に動き出した政府の出先機関の自治体移管を、振り出しに戻してしまった。
この改革は、菅内閣が昨年末に、受け皿が整った地域から権限や人員を移していく方針を決めていた。手足をもがれる格好の各省の抵抗が強いため、全国一斉でなく、できるところからやろうという苦肉の策だった。
これに呼応して、大阪府や京都府などでつくる関西広域連合と、九州地方知事会が名乗りをあげた。対象は国交省の地方整備局のほか、経済産業局、地方環境事務所で、政府も来年の通常国会に法案を出す筋書きを描いているはずだった。
ところが、首相交代のあと事態は一転する。今月初めの知事らとの3カ月ぶりの協議で、政府は「直接公選の長を持たない広域連合が、出先機関の移譲を受けることをどう考えるか」など16の検討課題を示したのだ。
要するに、これまでの議論をなきものにしようということだ。二重行政のムダをなくす改革の効果には見向きもしない。
列席した橋下徹・大阪府知事は「原則廃止と言ったのは民主党。いまになって問題点を挙げるのなら原則廃止は撤回すべきだ」と憤慨した。上田清司・埼玉県知事も「これではいつまでたっても進まない」と怒った。当然の反論である。
出先機関改革では、いったん凍結された合同庁舎の新設計画の一部が解除されたことを、さきごろ朝日新聞が報じ、国会でも問題になった。改革に後ろ向きな各省のペースになっている証しでもあった。
すでに前政権のときから、政務三役が役所を代弁し、改革のブレーキを踏む場面が目立っていた。それを、首相らがなだめすかすように協議を進めてきた経緯がある。
野田政権は、大震災からの復興への取り組みや、税と社会保障の一体改革などを抱えている。首相にとって、地域主権改革の優先度が高くない事情はわからないではない。
出先の移管を、市町村が不安視している実情もわかる。
それでも地域主権改革は、自民党政権との違いを示す政権交代のシンボルだったはずだ。
「普天間飛行場は県外へ」、16兆8千億円の財源確保……。
民主党は公約を次々にほごにしてきた。こんどは閣議決定までした改革を、お蔵入りにしようというのか。