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「一票の格差」は、もう放置できない。衆院は最高裁が違憲状態だと断じ、参院も高裁での違憲判決が相次いでいる。これを解決するために、私たちは衆院と参院の役割を根幹から規定し[記事全文]
環太平洋経済連携協定(TPP)の参加問題について、民主党のプロジェクトチームが議論を始めた。政府が参加の是非を判断する予定の11月上旬に向けて、党内で様々な会合が開かれる見込みだ。[記事全文]
「一票の格差」は、もう放置できない。衆院は最高裁が違憲状態だと断じ、参院も高裁での違憲判決が相次いでいる。
これを解決するために、私たちは衆院と参院の役割を根幹から規定し直しつつ、両院の選挙制度を一体的に改める必要があると唱えてきた。
「一票の格差」をただすだけでは、両院の選挙制度の抱えるさまざまな問題を解決できない、と考えているからだ。
しかし、当事者である国会の動きは鈍い。一体改革のそぶりもない。それでもやっと、衆院の定数を是正する与野党協議が始まる。
急がねばならない。衆院議員の任期は再来年8月までだが、解散はいつでもありうるのだ。
各党がまず合意すべきことは、はっきりしている。あらかじめ各都道府県に1議席を割り振る「1人別枠方式」をやめる法案を、近く始まる臨時国会で成立させることだ。
これなしには、具体的な区割りの見直し作業に入れない。
別枠方式は、1994年に現行制度を導入した際に、地方の代表を急に減らさないように設けた。もはや歴史的な使命は終えたし、最高裁判決も廃止を求めている。
同時に議員定数も減らそう。復興増税で国民に負担を求め、国家公務員の給与も削らねばならない時だ。政治家が率先して身を切らなければ、世論の理解は得られまい。
ただ、抵抗の少ない比例の定数だけを減らすのは乱暴すぎる。まず小選挙区から削る努力を求める。
公明党やみんなの党は、さらに踏み込んで選挙制度そのものの見直しを訴えている。
確かに、小選挙区に軸足を置いた現行制度には、2大政党間の政争を激化させた、政治家の劣化を招いたといった批判がある。5回の総選挙を経て、そろそろ制度の功罪を客観的に検証すべき時だろう。
それでも抜本的な改革には、相当の手間と時間がかかる。ここはまず、違憲状態のまま次の総選挙をしないことを最優先に考え、「一票の格差」の是正を第一歩にするのが現実的だ。
もちろん、小手先の是正でお茶を濁すのは許されない。そうさせないために、選挙制度をめぐる根本的な議論をする仕組みをつくる必要がある。
衆参の選挙制度を一体的に議論する場として、約20年ぶりに首相の諮問機関の選挙制度審議会を設けるのだ。
議員生命がかかる話は、第三者機関に任せよう。
環太平洋経済連携協定(TPP)の参加問題について、民主党のプロジェクトチームが議論を始めた。政府が参加の是非を判断する予定の11月上旬に向けて、党内で様々な会合が開かれる見込みだ。
反対・慎重派の12日の会合では医療・製薬分野が取り上げられた。日本医師会の幹部らが、TPP参加に伴う規制緩和で国内の制度が崩壊すると訴えたのに対し、外務省の担当者は「公的な医療保険制度はTPPでは議論の対象外」と説明したが、参加議員は納得しなかった。
TPPでは最大の懸案である農業のほか、労働、環境、食品安全など幅広い分野が対象になる。政府は交渉状況を丁寧に説明してほしい。反対派が唱える「国民の生活を守る」という大義名分の陰に、関連業界の既得権益を守る狙いがないか、見極めることが重要だろう。
同時に、国際経済の中で日本が置かれた状況という大局的な視点を忘れてはなるまい。
少子化で国内市場が縮小するなか、成長著しいアジア太平洋地域を中心に経済連携を深めることは欠かせない。この点で異論は少ないはずだ。
日本も東南アジア諸国などと2国間の経済連携協定(EPA)を積み重ねているが、農業への配慮から、相手国との間で自由化の例外品目を数多く設けてきたため、効果に乏しい。
日本がもたつく間も、世界は動いている。自動車や電機といった日本の主力産業でライバルとなった韓国が典型だ。
欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)が7月に発効したのに続き、米国とのFTAも米議会が法案を可決し、来年早々の発効に近づいた。米国は乗用車に2.5%、トラックに25%など関税をかけているが、韓国製品には順次撤廃される。
EUでも乗用車の10%、薄型テレビの14%といった関税が、対韓国では削減・撤廃されていく。日本の産業界は危機感を強めており、欧米や欧米とFTAを結ぶ地域への工場移転に拍車がかかりかねない。
韓国は90年代末、「外需が国の生き残りのカギ」と見定め、農業の保護策をまとめつつFTA推進へかじを切った。日本と比べて経済規模が小さく、貿易への依存度が極めて高いなど、事情に違いはある。ただ、明確な戦略と実行力に学ぶべき点は少なくない。
TPPへの参加は、経済連携戦略での遅れを取り戻す、またとない機会だ。野田首相に問われるのも、大きな戦略とリーダーシップである。