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天声人語

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2011年10月15日(土)付

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 その音の聞こえ方は人によって違う。ガサリかゴトンか、それともズサリだろうか。福島県いわき市の佐々木美保さん(40)は、こう書いている。「『カタン……』それは毎朝、わが家のポストに新聞が届いた日常の音」。そして、「その音が三月十一日の朝で終わってしまいました」▼しばらくすると避難所に新聞が届くようになったそうだ。誰からともなく配達を買って出て、段ボール敷きの一軒一軒に届け合った。「今日も朝が来た」と実感できたと、佐々木さんは感謝をつづる▼あすの「新聞配達の日」にちなんで、日本新聞協会が募ったエッセーに、今年は震災をめぐる話が目立った。配達員へのねぎらいや、新聞が届く日常のいとおしさに思いを寄せてくださる読者が多かった。日本の新聞の95%は宅配され、全国の39万人がそれを担っている▼弊紙の関係では悲しいこともあった。岩手県陸前高田市の販売所の高2の娘さんが津波で亡くなった。家業を手伝い毎朝配達をしていた。あの日も5時に起き、戻ると冷えた体をこたつで温めて登校したそうだ▼雨風を衝(つ)き、寒さに頬を赤くして、日々届けてくれる新聞に「天声人語」も載っていた。あの朝の小欄は、奇(く)しくもニュージーランド地震で落命した日本の若者の話を書いている▼〈「志半ば」の紋切り型では無念を言い尽くせぬ、悲しみの春である〉と結んだ言葉が今更ながらやりきれない。娘さんは遠藤愛実(あみ)さん。生前を知らぬ夭折(ようせつ)の名が、ひとしお胸に染みてくる。

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