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壇ノ浦で平家が敗れた1185(元暦2)年、京都で大きな地震があった。近年の調査によればマグニチュードは7.4程度だったらしい。山は崩れ、地面が割れ、家屋がことごとく潰れる惨状を、鴨長明が「方丈記」に書きとめている▼そして、「羽なければ、空をも飛ぶべからず。竜ならばや、雲にも乗らむ」と恐怖を記した。今回の震災でも、空へ飛んで逃れたカモメをうらやむ声を、直後に訪ねた被災地で聞いたものだ▼一方で、「羽があるのになぜ」と思わせたのが、宮城の航空自衛隊松島基地で津波を浴びた戦闘機である。1機110億円で買った18機が水没した。うち12機は処分、6機は修理されるが800億円かかる。「お粗末」という投書が先の声欄に載った▼被災機が修理可能かどうかを見る分解調査だけで136億円かかった。これだけで、あの凍結された公務員宿舎の総工費を上回る。あれやこれや計1090億円を防衛省は第3次補正予算に要求した。羽が生えたように血税が飛んでいく▼離陸には時間がかかり、間に合わないとの判断だったという。無理をすれば人命も危なくなる。それは分かるとして、これだけの損失と出費を、気前よく不問には付せない国民も多かろう▼予想される津波にハード、ソフトでどんな対策を講じていたのか。よもや「想定外」ではあるまいが、ならば不作為の責任はなかったか。次期戦闘機という総額1兆円規模、ピカピカの買い物の前に、進んでの検証と開示が欲しい。