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2011年10月14日(金)付

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外来100円負担―無策よりましな選択肢

病院に行くと、いまは医療費の1〜3割を窓口で払う。そこに100円を上乗せして、重い病気の人の医療費に回す。こんな仕組みが、厚生労働省から審議会に提案された。[記事全文]

欧州危機―十分な額の資本注入を

ギリシャに端を発した欧州の財政危機が、金融危機に拡大するのか。それとも瀬戸際で、欧州が政治的な結束と実行力を発揮できるのか。ユーロ圏からギリシャへの資金支援がずるずると[記事全文]

外来100円負担―無策よりましな選択肢

 病院に行くと、いまは医療費の1〜3割を窓口で払う。そこに100円を上乗せして、重い病気の人の医療費に回す。

 こんな仕組みが、厚生労働省から審議会に提案された。

 医療費には、月々の自己負担に上限がある。中程度の所得の人だと8万円余りだが、長いあいだ高額の治療を受ける患者にとって負担感は強い。

 そこで、すべての通院患者から少額を集める。負担が増えることで受診が抑制され、その分の医療費が減る。それらで重病患者の負担を軽減する案だ。

 高額の医療費への対応は強化したい。しかし、そのためになぜ、窓口負担の上乗せなのか。

 サラリーマンの窓口負担を2割から3割へ引き上げると決めた02年、さらなる負担は求めないとした。約束違反にならないのか。負担増で、必要な診療も受けなくなる人が出ないか。

 こうした疑問や批判を承知のうえで、この提案は出てきた。背景や理由を理解し、全体を見渡した議論が必要だ。

 年間約39兆円の医療費を賄う財源は三つしかない。保険料で50%弱、税から36%。残りの15%弱が窓口での自己負担だ。

 みんなでお金を出し合い、困った時に使う。保険の仕組みからいえば、高額療養費は、集めた保険料から賄うのが筋だ。

 だが、景気低迷で、保険料を引き上げるのは容易ではない。

 低所得者が多い国民健康保険では、滞納が増え続けている。中小企業が加入する協会けんぽでは、賃金が下がるのに伴い保険料率が急上昇し、来年度は10%を超える見込みだ。大企業主体の健康保険組合も、集めた保険料の45%を高齢者医療に回され、不満を募らせる。

 税はどうか。税と社会保障の一体改革案では、消費税を5%幅引き上げるとしたが、税収増がどこまで高額療養費に充てられるかわからない。

 ほかに選択肢はないのか。たとえば、70〜74歳の窓口負担は本来2割なのに1割に抑えられている。そのために年2千億円の税金を投じるのは妥当か。

 医療費の負担の重さに着目した救済機能が強化できるなら、年齢だけで窓口負担の割合が異なる現行制度は意味が薄れる。

 困っている人に、一層きめ細かく対応するには共通番号制の導入が有効だろう。ただ、実施までには時間がかかる。

 「100円上乗せ」は苦肉の策だが、無策よりはましだ。

 民主党政権は給付の充実には熱心だが、負担増からは目をそむけがち。そんな印象を打ち消す責任ある議論を望む。

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欧州危機―十分な額の資本注入を

 ギリシャに端を発した欧州の財政危機が、金融危機に拡大するのか。それとも瀬戸際で、欧州が政治的な結束と実行力を発揮できるのか。

 ユーロ圏からギリシャへの資金支援がずるずると延びるなかで、仏・ベルギーの大手金融機関デクシアが破綻(はたん)した。保有するギリシャなど問題国の国債が重荷になった。

 欧州諸国はこれまで「ギリシャ国債でも安全だから、銀行には資本不足の心配はない」と言い張ってきたが、その建前が吹き飛んだ。欧州連合(EU)委員会は財政危機から金融危機への連鎖を防ぐため、銀行に資本増強を強制する方策のとりまとめに入った。

 注入する資本の原資のひとつとなる欧州金融安定化基金(EFSF)の拡充策は加盟17カ国のすべてで承認される見通しだ。基金の使用枠を4400億ユーロに広げ、資本注入のほか、問題国の国債を市場から買い上げることもできるようにする。

 大事なのは、銀行の厳格な資産査定を前提に、「打ち止め」感が出るのに十分な規模の資本を迅速に注入できる態勢を整えることだ。原資が足りないならEFSFを拡大すべきだ。

 欧州は23日の首脳会議で包括的な対策の合意を目指す。これが満足な中身になれば、11月のG20サミットで世界が欧州を支援する政策協調が動き出すことへの期待感も高まる。

 ただ、欧州危機の根は深い。ギリシャ国債の元本の大幅な削減は不可避だろう。その現実を直視しなければならない。貸し渋りを防ぎつつ、銀行の不良資産の処理を進めるには巨額の資金が必要になる。

 生じる損失を、銀行やその株主とユーロ圏の政府でどう分かち合うか。これは欧州の責任で決めなければならない。

 ここがはっきりすれば、EFSFの抜本的な強化に向けて、資金繰りの支援などでG20や国際通貨基金(IMF)にできることは多いはずだ。

 欧州危機をめぐる一連の混迷は、日本のバブル崩壊後の金融危機とうり二つだ。日本政府は危機が高じると弥縫(びほう)策でお茶を濁し、市場が静まると対策が滞り、再び危機を招くという事態を繰り返した。

 最後は「日本発の世界恐慌は起こさない」と宣言して、巨額の公的資金で銀行の破綻と損失の処理に踏み切った。

 政策決定が一元化されていない欧州だが、政治的求心力を確立して危機を克服しなければならない。これ以上、日本と同じ轍(てつ)を踏んではならない。

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