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「暮しの手帖」を創刊した伝説の編集者、故花森安治に「女だけの政治」と題する一文がある。戦後しばらくして書かれたが、もはや男の政治はダメだから女に任せてみよ、という論旨に古さはない▼いわく「(昔から)政治は男のやるものときまっていた。そして男たちは、ああでもない、こうでもないといろいろやってきたが、どうやってみたところで、戦争は次から次へとくりかえされるし、世の中の不合理は、すこしも改まらないのである」と。そんな花森がうなずくような、今年のノーベル平和賞だった▼贈られる女性3人のうち、エレン・サーリーフ氏(72)は西アフリカのリベリアの大統領。独裁やら汚職やらで「男たち」が荒廃させた国を立て直してきた▼約27万人が内戦で死に、失業率は85%、識字率4割という出発点から6年前に走り出した。汚職撲滅のために財務省の全職員300人を解雇し、同省や司法、商務などの大臣、警察トップに女性を起用した。「剛腕」とはたぶん、こうした人のことを言う▼自身、投獄された経験があり、その姿勢は「非暴力」に根ざす。「非暴力は人間に委ねられた最大の力である」とガンジーは言った。現職政治家ゆえ毀誉(きよ)も褒貶(ほうへん)もあろうが、現実を変える手段としての非暴力のパワーを信じたい▼ノーベル平和賞は栄(は)えある賞ながら、逆説的だ。不幸や不条理が大きいほど賞は注目され輝きを増す。受賞3女性の「銃なき闘い」が、平和賞不要の平和な世界につながるよう願う。