HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 28921 Content-Type: text/html ETag: "991e69-5409-dc31c840" Cache-Control: max-age=5 Expires: Mon, 10 Oct 2011 20:21:07 GMT Date: Mon, 10 Oct 2011 20:21:02 GMT Connection: close
Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
東日本大震災の復興財源として、たばこ増税が検討されている。1本当たり2円、1箱にすれば40円になる。復興に多額の資金を要することは事実だが、取りやすいところからとる安易[記事全文]
ミャンマー(ビルマ)政府が民主化勢力との対話やメディア規制の緩和など新機軸を矢継ぎ早に打ち出している。真の民主化への第一歩であればと願う。20年ぶりの総選挙が昨年11月[記事全文]
東日本大震災の復興財源として、たばこ増税が検討されている。1本当たり2円、1箱にすれば40円になる。
復興に多額の資金を要することは事実だが、取りやすいところからとる安易な議論でなく、たばこ価格は国民の健康の観点から考えるべきだ。
英国の医学誌「ランセット」は先月、日本の皆保険制度導入の50周年を記念する特集号を発行し、日本の保健医療制度を高く評価すると同時に、将来に向けての課題を挙げた。その筆頭が「喫煙率の高さ」で、禁煙政策の重要性を訴えた。
日本も批准したたばこ規制枠組み条約も、国民の健康を守るため、禁煙を進めるさまざまな政策を求めている。
たばこの健康への害はいうまでもない。肺がんだけでなく心臓など循環器系や脳血管などにさまざまな病気を引き起こす。全国で毎年13万〜20万人が亡くなっていると推定される。
他の人のたばこの煙を吸う間接喫煙による死者が約6800人、との推計もある。
そのリスクは、いま問題になっている放射線と比べても大きい。国立がん研究センターによれば、非喫煙者の女性のがんのリスクは、夫が喫煙者だと0.2〜0.3%高まる。一方、放射線による発がんの影響が明らかになるのは、少なくとも累積で100ミリシーベルトという高い線量の被曝(ひばく)で、がんになるリスクは0.5%高まる。
医療費の増加や労働力の損失など、喫煙による社会的損失は年5兆円以上との試算もある。男性の喫煙率が4割近くあり、「たばこ大国」と呼ばれる現状を放置することは許されない。
禁煙のためにきわめて重要なのが価格だ。欧米諸国に比べて安い日本のたばこ価格を上げることは、とりわけ若年層が新たにたばこを吸わないようにするうえで効果が大きい。
昨年10月、過去に例のない1箱100円の大幅値上げが実現した。政権交代後、政府税制調査会で初めて、健康問題としてたばこ増税が議論された結果だ。ようやく始まった健康の観点からのたばこ価格の議論を、後戻りさせてはならない。
厚生労働省研究班の調査では、禁煙者の約7人に1人が昨年の値上げがきっかけと回答した。価格が500円なら36%、さらに600〜700円なら21%の人が禁煙すると答えた。
健康を守るには、思い切った値上げが必要だ。
私たちはこれまで、1箱千円でもいいと主張してきた。この考えは今も変わらない。
ミャンマー(ビルマ)政府が民主化勢力との対話やメディア規制の緩和など新機軸を矢継ぎ早に打ち出している。真の民主化への第一歩であればと願う。
20年ぶりの総選挙が昨年11月に実施され、「民政移管」が宣言された。しかし軍事政権が制定した憲法の規定もあり、国会議員の8割以上は軍人や軍出身者が占める。実質的には軍政の継続とみられていた。
ところがテイン・セイン大統領は8月に民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんと面談。9月には中国の援助で建設中の水力発電ダムの工事凍結を指示した。環境問題などで少数民族が反発していた事業だ。
政府はさらに、亡命活動家らに帰国を促し、外国人記者に国会の取材を認めた。
出版物などの検閲を緩めた結果、スー・チーさんが表紙を飾る新聞や雑誌が街に出回り、外国報道機関や反政府団体のサイトが閲覧できるようになった。
政府は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国を3年後に務めたい、と立候補した。
これをステップに国際社会への復帰を果たし、欧米の経済制裁を解除させて、最貧国から脱したいと考えているのだろう。
急な展開に欧米諸国はとまどいつつも歓迎している。だが民主化勢力は疑心暗鬼の様子だ。
02年にも軟化政策の時期があった。軍政トップがスー・チーさんと会談したものの、その後の揺り戻しでスー・チーさんは再び拘束され、対話を主導した首相が失脚した経緯がある。
今回も政府・軍内部で、改革派と守旧派の争いがあると推測されており、民主化が定着する保障はない。議長国が決まるまでのポーズだとの見方もある。
注目のスー・チーさんは「対話はまだ十分ではないが、変化が始まったところだ」と、政府の働きかけに応じる構えだ。民主化勢力には局面を打開する他の選択肢がない現実もある。
変革が本物と認められるにはまず、2千人とされる政治犯の釈放が求められる。対立が続く少数民族との対話も必要だ。総選挙への参加を拒否したスー・チーさんの国民民主連盟に改めて、政党登録と補欠選挙への参加を促してはどうか。
日本政府は早速、人道部門に限っていた途上国援助を人材育成などに広げた。日本企業の現地視察も始まった。
変化にあわせて援助を再開したり、経済交流を加速したりするのはいい。肝心なのは、改革が後戻りしないかを絶えず見極めながら、さらなる民主化を後押しする姿勢で臨むことだ。