HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19872 Content-Type: text/html ETag: "6262ea-4835-aa67fdc0" Cache-Control: max-age=5 Expires: Sat, 08 Oct 2011 03:21:45 GMT Date: Sat, 08 Oct 2011 03:21:40 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2011年10月8日(土)付

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 濁点のあるなしで意味の変わる言葉遊びを先日書いたら、面白いという便りをいくつか頂戴(ちょうだい)した。そこで調子に乗って、まど・みちおさんの「ちがい くらべ」なる詩の一節をご紹介しよう。〈はか しんでからで/ばか いきてるうち〉▼「はか」はともかく「ばか」はニュアンスの幅が広い。人をけなす言葉、かと思えば人への温かい情愛を包んでも使われる。まどさんのは後者だろう。人間肯定の深い思いが背後にある▼スティーブ・ジョブズ氏の語った「馬鹿」にも味わいがあった。亡くなった米アップル社のカリスマ創業者である。6年前、スタンフォード大で卒業生に贈った「馬鹿であり続けよ」(Stay Foolish)の一語は語りぐさだ。何よりもその生涯が、「お利口」では出来ない型破りを成してきた軌跡でもあった▼iPod(アイポッド)、iPhone(アイフォーン)をはじめ、業績を連ねれば小欄の字数などたちまち尽きる。ともあれ、この人が「創っては壊し」を繰り返すたびに、世界は好奇心と楽しみを膨らませた▼その訃報(ふほう)を、多くの人が、氏が世に出したスマートフォン(多機能携帯電話)で知った。悼む言葉がツイッターで世界中にあふれた。56歳のピリオドは早すぎるが、世界を変えたITの旗手としては、本望ではなかったか▼卒業式のスピーチで、ジョブズ氏はこうも語っていた。「自分のハートと直感に従う勇気を持ちなさい」。生と死とを隔てたが、お墓の中からもきっと若い世代を励まし続けるに違いない。

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