HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19816 Content-Type: text/html ETag: "f66de7-47fd-542dcd40" Cache-Control: max-age=5 Expires: Thu, 06 Oct 2011 22:21:42 GMT Date: Thu, 06 Oct 2011 22:21:37 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 天声人語

天声人語

Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2011年10月7日(金)付

印刷

 かつてご紹介した詩をふと思い浮かべた。〈戦死やあわれ/兵隊の死ぬるや あわれ/遠い他国で ひょんと死ぬるや/だまって だれもいないところで/ひょんと死ぬるや……〉。胸を絞るような詩を残して、竹内浩三は終戦の年にフィリピンで戦死した▼才を惜しむ人たちによって広まった詩は「骨のうたう」という。戦場に散った自分が白木の箱で故国に戻ってくる。そんな想像だ。戦死と、骨になっての帰国を「こらえきれないさびしさや」と表した。しかし彼の骨は戻らなかった▼そうして多くの遺骨が今も残るフィリピンで、厚労省による遺骨収集のずさんさが明るみに出た。女性や子どもも含め、日本兵ではないと見られる骨が多数混じっていたという。関連はともかく、近年墓荒らしが相次いでいたと聞けば、胸のふさぐ遺族は多かろう▼NPO法人に委託し、現地任せにした結果のようだ。千鳥ケ淵の戦没者墓苑に納めた4500人の遺骨は他に移された。やっと戻った故国で安らげなくては、骨も浮かばれまい▼墓から暴かれた骨も泣いていよう。しっかり鑑定して、こちらも戻すべきは祖国に戻すべきだ。そもそも海外での遺骨の収集は、他国を戦場にした歴史に根ざす。戦没者を悼みつつ、そこは胸に畳まねばならない▼婚約者を沖縄戦で亡くした随筆家、故岡部伊都子さんの一文が浮かぶ。「骨にも幸、不幸のあることを生きているものの幸、不幸と同じように感じてしまう」と。この誠実が関係者に欲しい。

PR情報