近年、問題視されてきた大都市制度の見直しが、第三十次地方制度調査会の審議対象となった。道府県と政令市による二重行政の解消だけでなく、世界の都市間競争を視野に議論を深めてほしい。
大都市制度の見直し議論が高まったのは橋下徹大阪府知事が打ち上げた「大阪都」がきっかけだ。府と大阪、堺両市を再編し、広域行政は「都」が、住民サービスは市を分割する「特別区」が担う構想だ。愛知県と名古屋市の司令塔を一本化する「中京都」や、新潟県と新潟市を合併させる「新潟州」が続いた。
十九政令市でつくる指定都市市長会は道府県から独立する「特別自治市」を提案し、地方事務すべてと税財源の移譲を求めている。横浜、川崎、相模原、千葉、さいたまの関東五市と京都、神戸の関西二市も共同研究会を設ける。
それぞれに賛否はある。住民への説明もまだまだこれからだ。それでも、地方から国の在り方を変える問題提起は評価できる。応じた片山善博前総務相が、政権交代後初めて地方制度調査会を設置し、審議項目に加えた。議論は地域主権改革の肝にもなる。
政令市は当初、人口百万人が目安だった。平成の大合併で七十万人程度まで緩和された。現十九市はいずれも道府県に含まれながら、事務の大半が移譲されている。あいまいさが残るのは、正式な制度ではないからだ。
横浜、名古屋、京都、大阪、神戸の五大都市は戦後間もなく創設された「特別市」になるはずだったが、府県側の反対で暫定措置の「政令市」となった。そのまま半世紀が過ぎ、二重行政の無駄が顕著になった。政令市に道府県議は必要か−などの指摘は多い。
財政難が長期化する中、急増する犯罪や生活保護への対応など大都市特有の行政需要も増え、住民サービスを担う基礎自治体の機能を維持しながら、圏域の中核として広域機能も果たす余裕がなくなった。曲がり角に来ている。
震災対応では、対象自治体を決めてフルパッケージの支援を実践するなど、大都市ならではの強さを発揮した。こうした利点を前面に押し出すべきだ。
大都市制度が整う韓国のソウル特別市や仁川広域市は、立派な国際都市に成長している。
政令市はそれぞれ、世界的な都市間競争に打ち勝つ潜在能力を持っている。
震災を乗り越え、日本の再生を牽引(けんいん)していく姿を期待したい。
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