HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 05 Oct 2011 02:04:36 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:ウォール街デモ 政治不全へ募る抗議:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

ウォール街デモ 政治不全へ募る抗議

 ウォール街を占拠せよ−。こう銘打った市民運動が全米に広がっている。中東で吹き荒れる「アラブの春」に触発された抗議運動は、欧米諸国が陥りつつある政治不全に厳しい警告を発している。

 米ニューヨーク市ウォール街で、連日座り込みの集会が続けられている。「ウォール街は強欲資本主義の象徴」と批判する市民運動が呼び起こした抗議運動だ。 

 先月中旬始まった静かな抗議行動はネットを通じて徐々に広がり、最大数千人の規模ながらシカゴ、ボルティモアなど全国各地にも拡大している。先週末には多数の逮捕者も報じられ、かえって国際的な注目を集める形になった。

 運動の中心は学生、労働組合員、失業者ら、若く、社会的に弱い立場の人が多い。主宰者のブログは「学生ローンが返済できない」「1%の国民に富が集中している。99%のわれわれの声が届いていない」「卒業しても仕事がない」など切実な訴えに満ちている。四千六百万人に上る貧困層、9%台の失業率に軋(きし)む米社会の草の根の声が聞こえる。

 米国民の政治不信は深刻だ。政府閉鎖をもたらしかねない予算審議でもたつく連邦議会への支持率は10%台の低水準だ。国民融和を掲げて就任したオバマ政権の支持率も40%台に低迷して久しい。

 貧困や格差に耐えきれず独裁体制を倒し、民主化が緒に就いたばかりの中東の息吹が、世界を一巡りして民主政治の最先進国とされる米国の大衆運動を引き起こしたとすれば、大いなる皮肉だ。

 フェイスブック、ツイッターなどソーシャルメディアが築くネットワーク型市民運動は、経済危機に直面するアテネ、ロンドンなど欧州、情報統制が強まる中国などで起きた市民の反乱でも大きな役割を果たしている。日本でも、脱原発集会に数万人が集まるなど、その機運が見える。

 共通した背景に、冷戦後のグローバル化で噴出した諸課題に対応しきれない各国の事情がある。政治の自由、経済の自由、情報の自由が冷戦を終結させた三つの大きな要因だった。その成果が広く享受されていない。抗議を貫く声なき声ではないか。

 新たな民主化運動は、一九六〇年代世界中で吹き荒れた街頭闘争をも想起させる。ロンドンの暴徒化に見られた無政府主義的な逸脱を回避しつつ、政治が危機感をもって対応できるか。新たな市民運動が突きつけている課題は重い。

 

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