HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 03 Oct 2011 20:08:15 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:被災者報道 伝え続ける責務がある:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

被災者報道 伝え続ける責務がある

 名古屋で開かれたマスコミ倫理懇談会全国大会のテーマは東日本大震災に絞られた。メディアには被災者に信頼される取材姿勢、少しでも希望のもてる報道をする責務の重みがある。

 大会の論議は七つの分科会で交わされた。このうち「被災者から見た報道」分科会には津波被害に遭った岩手県の被災者や避難所支援者らが参加し、発言した。「生存者情報で家族の無事を知ったときは、みんな喜んだ。マスコミの震災報道は重要だと思っているし、感謝している」

 地元の岩手日報は各避難所に記者を投入し、社員総動員で約二十日間にわたって五万人余の避難者名簿紙面を作った。この分科会の発言に立った同紙記者は「被災者が当時求めていたのは生死情報だった。地元紙にしかできないことに徹した」と説明した。

 ただ被災者は震災報道に手厳しい見方もしていた。時がたつにつれ「誘導型や取材側に都合がいい報道が増えた」と指摘した。例えば、避難所で被災者がテレビの歌番組を楽しんでいると「国会中継に変えて」と注文された。混乱する政局と被災地をニュース化しようという狙いが見てとれる。

 被災者が安否、生活情報をまず求めた状況は被災地はどこも同じである。宮城県では小さな新聞社が被災しながらも手書きの壁新聞を出し続け、頼りにされた。

 本紙は3・11以降、被災地の取材や紙面報道、社説など主張の論調の根底に、常に被災者の目線を忘れない姿勢を貫いてきた。

 時間の経過とともに変わっていく被災者の報道への要望に合わせて、義援金支給や雇用など生活支援、医療・防災、復興・再生への問題などときめ細かく報道を続けている。より多くの読者に、この震災の意味を発信したいからだ。被災者は全国各地にいる。

 東海・東南海・南海地震への対応など、災害列島に住む私たち自身の「学び」もおろそかにできない。被災地の復興・再生は、科学技術神話が崩れたともいえるわが国自体の再生という重大な課題をも突きつけているからだ。

 「報道が尻すぼみになって風化していくのが怖い」「希望が持てるように、私たちを置き去りにしないでほしい」と多くの被災者が口にする。

 報道批判は真剣に受け止めたい。その上で、東北の人びとが直面している計り知れない痛みを伝え、前向きになってもらえる報道をし続けなければならない。

 

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