<政府は、テロから国民を守ることに失敗した>。十年前の米中枢同時テロ後、遺族の強い要望で設置された独立調査委員会は、厳しく政府を批判した▼米議会が主導した調査委は一年八カ月にわたって検証。発生から三年後に、五百七十五ページもの報告書を提出した。中央情報局(CIA)などがアルカイダのテロを防ぐ機会を十回も見逃したと情報機関の連携の悪さにも踏み込んだ▼真相解明に前向きな米議会を見ていると、国政調査権を生かし切れない日本の国会が歯がゆかったが、福島第一原発事故を検証する調査委員会が国会に設置されることになった▼民間の有識者十人で構成し、国会議員二十人でつくる協議会を通じ、証人喚問ができる強い権限を持つ。議事は原則として公開される予定だ。有識者による調査委が国会に設置されるのは憲政史上、初めてとなる▼菅直人前首相の肝いりで置かれた調査・検証委員会は非公開のヒアリングを重ね、十二月に中間報告を出す予定だが、法律で権限が保障されていないことに加え、政府が設置した調査委が官邸や経済産業省の責任を追及し切れるのかとの懸念があった▼国会への設置には「政治ショー化する」という声もあり、各党は「政治利用してはならない」と合意した。議員の皆さんはそんな愚行をなさらないと信じる。世界中が注目する検証作業なのだから。