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天声人語

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2011年10月4日(火)付

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 「世の中は澄むと濁るの違いにて」と言う。そのあとに「福に徳あり、ふぐに毒あり」とか「刷毛(はけ)に毛があり、はげに毛がなし」などと続けて戯(ざ)れる。濁点のあるなしで意味が変わる日本語の遊びだ▼はたと手を打つものもある。「今日も元気だ たばこがうまい!」は、専売公社時代の懐かしい宣伝文句。これが濁点を一つ取ると「今日も元気だ たばこかう(買う)まい!」と禁煙のすすめに早変わりする。織田正吉さんの『ことば遊びコレクション』に教わった▼昨年秋のたばこ大幅値上げから1年がたつ。大手製薬会社のこの夏の調査で、3人に1人が「買うまい」と禁煙に挑戦し、4割近くが成功したことが分かった。私感だが、まずまずの歩留まりではあるまいか▼歴代の政府はたばこ税を「金づる」にしてきた。そこから「国民の健康」へと舵(かじ)を切ったのが去年の値上げである。禁煙に踏ん切りたい人の背中を一斉に押す効果をもたらした。懐に響くことには誰しも敏感になる▼そして今年、さらなる増税が震災復興財源として政府案に盛り込まれた。1本あたり2円の加算は、来年秋からの見通しだ。まだ先の話ではある。だがここは、復興のためにせっせと紫煙をくゆらせるより、これを機に煙断ちを考えてはいかがだろう▼言葉遊びに戻れば「背(せい)は高く、税(ぜい)なら低く」だろうが、禁煙のきっかけを求めて、いっそ「税は高く」の愛煙家もおられようか。命を縮めての一助より、長く健康に働いて貢献する方がいい。

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