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東京電力の財務内容やリストラすべき資産などを査定する政府の委員会が報告書をまとめ、野田首相に提出した。委員会は、人員削減や給与・年金のカット、福利厚生の圧縮などで合計2[記事全文]
東京電力が国会議員のパーティー券を買っていた。朝日新聞の取材で、2009年までの数年間、自民党を中心に毎年50人以上の議員から購入し、年額は5千万円を超えていたことがわ[記事全文]
東京電力の財務内容やリストラすべき資産などを査定する政府の委員会が報告書をまとめ、野田首相に提出した。
委員会は、人員削減や給与・年金のカット、福利厚生の圧縮などで合計2兆5千億円強のリストラが可能と見積もった。
東電が当初想定した倍以上の額である。地域独占のなかで長年培われてきた甘い経営感覚が、甚大な被害を引き起こし倒産の危機を迎えるに至ってもなお、ぬぐいきれないことを浮き彫りにした。
報告書は、新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働が見込めず、電気料金の値上げもしない場合、東電は最大で8兆円規模の資金不足に陥り、債務超過に転落するとの見通しを示した。
こうした試算が、安易な原発の再稼働や値上げ容認論へとつながらないよう、注意しなければならない。
福島第一原発の廃炉や除染、損害賠償の費用は、試算以上に増大するおそれがあり、東電に重くのしかかる。報告書に基づいて厳しいリストラを課したとしても経営環境はきわめて厳しく、いずれ抜本的な整理は避けられないだろう。
むしろ今回の報告書の内容は、電力業界全体の改革に生かしたい。
例えば報告書は、現在の電気料金の決め方である「総括原価方式」に疑問を呈している。
発電所や送電線などの資産に一定比率をかけた「報酬」を、料金に含めて回収できる制度だ。
もともとは、事業者が設備投資を渋って電力の安定供給が妨げられることのないようにと戦後導入された仕組みだった。経済成長に一定の歴史的役割を果たした面はある。
しかし、経費や資産額が大きいほど利益が出るため、事業者側にコスト削減や効率化への意欲が働かない、と以前から指摘されていた。
今回の査定では、過去10年間の料金算定が、実際にかかった費用よりも約6千億円過剰に見積もられていたと判断した。
オール電化の宣伝費や寄付金、各種団体への拠出金などが「経費」に計上され、料金に含まれていることなどの問題点も、具体的に示された。
こうした収益構造は、規模の違いはあってもほかの電力会社にも共通する。すでに枝野経産相は総括原価方式の見直しに言及している。
今後、政府内のエネルギー政策見直しの過程で、電力業界の高コスト体質にもしっかりとメスを入れる必要がある。
東京電力が国会議員のパーティー券を買っていた。
朝日新聞の取材で、2009年までの数年間、自民党を中心に毎年50人以上の議員から購入し、年額は5千万円を超えていたことがわかった。
この実態は、政治資金収支報告からは明らかにならない。1回あたりの購入額が20万円以下で、報告書に記載する義務がないからだ。
だが、この「合法」には問題がある。理由は主に二つある。
ひとつめは、公益企業という東電の性格である。
東電は1974年、政治の金権腐敗への批判が高まるなか、企業献金の自粛を決めた。「電力供給の地域独占が認められた公益企業にそぐわない」というのが理由だった。ほかの企業とは別次元の公正さや透明性が求められることに配慮した。
この自戒を、東電は忘れてしまったのか。
取材によれば、原子力政策における重要度や、業務への協力度を査定し、経産相の経験者らを高くランク付けして購入額を決めていたという。
つまり、地域独占を守り、もうけを生む原発を死守するという東電の利益にかなう議員に、手厚く資金を配っていたのだろう。税金のように、払わざるを得ない電気料金が、政治力の正体であれば見過ごせない。
二つめの理由は、これからの国会審議で、東電が対象になる場面が続くからだ。
東電は記者会見で「パーティー券の購入は社会通念上のおつきあい。飲食の対価と考えている」と答えた。ならば、購入相手やその金額を堂々と公表したらどうか。
同時に、議員側も受領額を自主的に公開すべきだ。
「合法」なのに、あえてそこまで求めるのは、いまこそ東電と与野党の国会議員との関係、距離を明確にする必要があると考えるからだ。
たとえば、近く国会には原発事故検証のための有識者による調査委員会とともに、国会議員の協議会が設けられる。そこに東電マネーをもらった議員が加わって追及しても、それは茶番になるだけではないか。
この問題は、ほかの電力会社からパーティー券を買ってもらっている議員にも、同様の疑念の目を向ける端緒になる。
電力会社からの資金提供をあいまいにしたまま、今後のエネルギー政策を立案することに、国民は納得しないだろう。
政治家と電力会社への、国民の視線は極めて厳しい。いま襟を正さずにどうする。