HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19836 Content-Type: text/html ETag: "867af4-4811-6bce2300" Cache-Control: max-age=1 Expires: Sun, 02 Oct 2011 23:21:41 GMT Date: Sun, 02 Oct 2011 23:21:40 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 天声人語

天声人語

Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2011年10月3日(月)付

印刷

 主人公にして悪党という人物をシェークスピア劇に探すならマクベスとリチャード三世だろうか。後者は実在したイングランド王。劇中、あらゆる謀略をめぐらせて王位強奪の野望を果たすが、ついには無援の討ち死にをする▼その王に、内戦のリビアで雲隠れしたカダフィ大佐を重ねた、先週のオピニオン面のコラム「風」が面白かった。大佐がシェークスピアに一家言あるという話にも少々驚かされた▼わが覚束(おぼつか)ない知識でも、カダフィ氏敗走はどこか「リチャード三世」の終幕を思わせる。味方は寝返り多勢に無勢、ついに徒歩(かち)となった王は叫ぶ。「馬をくれ、馬を!馬の代わりにわが王国をくれてやる!」(小田島雄志訳)▼もっとも王は逃げるためではなく、さらに闘うために馬を欲した。国内潜伏中と見られる大佐はいま、どちらのための「馬」を欲していようか。これ以上の流血は無用と願いたい▼劇の終幕では、王の手にかかった者の亡霊が次々に立ち現れる。片や先日、リビアの政治犯収容所近くの地中から人骨らしいものが見つかったと記事が伝えていた。〈独裁者去れば人骨顔を出し〉と、これは朝日川柳に載った。新時代への尊い人柱と言えようか▼とはいえ案の定、独裁の重しがとれた国内は諸勢力がせめぎ合ってまとまらない。「革命の果実」の取り合いもある。シェークスピア劇に「終わりよければすべてよし」があるが、実世界では終わりは次の始まりでもある。その難しさを乗り越えて行ってほしい。

PR情報