HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 01 Oct 2011 02:05:18 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:沖縄密約判決 文書廃棄は歴史の冒涜:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

沖縄密約判決 文書廃棄は歴史の冒涜

 沖縄密約をめぐる控訴審判決は原告の逆転敗訴となった。密約の存在自体は認めつつ、文書が廃棄された可能性を指摘した。永久保存すべき重要史料をないがしろにしたとは、歴史の冒涜(ぼうとく)に等しい。

 沖縄返還協定に基づいて、日本は総額三億二千万ドルを米国側に支払った。だが、その中には本来、米国が負担すべき軍用地復元補償費などが含まれていた。

 それ以外にも「秘密枠」が存在し、莫大(ばくだい)な金を日本が積んだ。

 その密約を一審に続き、東京高裁も認定した。「米国から沖縄を金で買い戻すという印象を持たれたくない」と日本政府が考えていたとも判決は述べた。だから密約文書を「秘匿する必要があった」とも指摘した。

 政府は長く「密約はない」と言い張ってきた。政権交代後に外務省の有識者委員会の報告書などが出たものの、中身は不十分だった。高裁判決が密約を認定した以上、政府としても「国家の嘘(うそ)」を認め、国民に謝罪すべきだ。

 密約文書の公開を求めた裁判で、原告が逆転敗訴したのは、文書が二〇〇一年の情報公開法の施行当時に秘密裏に廃棄された可能性があり、〇八年の不開示決定の時点では「文書はなかった」と判断したためだ。存在しないものは開示できないという理屈である。

 廃棄が事実ならば、事態はなお深刻と言わざるを得ない。文書を保管していた外務省と財務省の高官レベルで意思決定がなされ、組織的に廃棄していたはずだからだ。官僚による恥ずべき歴史の隠蔽(いんぺい)・偽造ではないだろうか。

 永久保存すべき日米関係の第一級史料が、米国の国立公文書館では確認できるのに、日本では「存在しない」とは法治国家のありようさえ疑われる。

 藤村修官房長官は「従来の政府の主張が認められた」と発言したが、事態を軽く受け止めてはいないか。

 領土返還交渉という重要な政策決定の証拠が、後世の歴史家に失われたわけで、許し難い蛮行である。密約に目を閉じ、廃棄という不法行為にも目を閉じるのか。政府はただちに廃棄の事実関係や経緯を調べ、関係者の責任の所在を明確にすべきである。

 沖縄は米国の都合のいいように使われ続けている。密約で決められた日本側の負担金は、在日米軍の「思いやり予算」の原型になった。現代の日米同盟のゆがみに通じる問題でもあるだけに、正確な歴史を復元してほしい。

 

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