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9月30日付 編集手帳

 終戦後のこと、進駐軍が六代目尾上菊五郎の芝居を見物し、楽屋を訪問した。「何歳か?」と問われ、「61歳」と六代目は答えた。さらに「歌舞伎の芸歴は何年か?」と問われ、「61年…」◆通訳が怪訝(けげん)な顔をしたと劇作家、宇野信夫氏が随筆に書いている(『かまわぬ見ます』)。六代目は1歳にもならない頃、鬼に抱かれた赤ん坊役で初舞台を踏んでいるから、(うそ)ではない◆10代半ばでデビューしても「中年からの役者」と呼ばれるのが歌舞伎の世界で、六代目の0歳は特別としても、梨園(りえん)の御曹司は多くが子役としてその世界に入る◆45歳での歌舞伎界入りは異例だろう。三代目市川猿之助さん(71)の長男で俳優の香川照之さんが九代目市川中車を襲名するという。梨園から離れて育ったが、「代々つづく“舟”に乗らなくていいのか」自問した末の決断という。演技には定評のある人だが、因習の色濃く残る世界には苦労も待ち受けていよう◆父猿之助さんの著書『演者の目』に、自身を鼓舞した一節がある。〈澤瀉(おもだか)屋の血は飛ぶんだ、飛ぶんだ、高く、高く…〉。旅立つ人に、その言葉をはなむけとする。

2011年9月30日01時14分  読売新聞)

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