小沢一郎民主党元代表の元秘書三人が有罪判決を受けた。ゼネコンとの金銭癒着を認定したうえで、政治資金規正法を踏みにじった犯罪と強い非難を浴びせた。「政治とカネ」の腐敗根絶を望む。
「多額の企業献金を得るために、あるいは癒着の発覚を免れるために、意図的に数多くの虚偽記入を行った」−。東京地裁は強い口調で元秘書を断罪した。
とくに石川知裕被告は現職の衆院議員で、「無罪」を主張していただけに、有罪判決は重くのしかかる。「判決内容は極めて不当だ」とコメントしたが、議員辞職を求める声が高まることも予想される。
小沢氏の政治的な責任論にまで発展する可能性も濃厚である。自らの資金管理団体「陸山会」の政治資金収支報告書がでたらめだったと、裁判所に叱責(しっせき)されたのも同然だからだ。
何よりもゼネコンとの金銭癒着が認定された点は大きい。判決は「小沢事務所が談合を前提とした公共事業の本命業者の選定に対する影響力があった」と指摘しつつ、「胆沢ダム(岩手県)建設工事の下請け受注に関して、水谷建設(三重県)から五千万円を受領した」と述べた。同社の元社長の証言などに基づく判断だ。
陸山会が土地購入資金に充てた小沢氏からの借入金四億円などを報告書に記入しなかったのは、単なる記載ミスでなく、ゼネコンとの癒着を知られたくなかった事情が背景にあったことになる。
高額な土地を購入すれば、報道機関の追及が行われ、「小沢事務所が長年にわたり企業との癒着の下に資金集めを行っていた実態が明るみに出る可能性があった」とまで判決は踏み込んだ。
小沢氏は検察審査会に「強制起訴」され、来月に初公判を迎える身だ。これまで「原資は東京・湯島の自宅を売却した残金だ。不正なカネは受け取っていない」と語っていたが、元秘書の有罪判決を受けて、どう反論するのか。
裁判官に「原資について明快な説明ができていない」とも指摘された。裏金の有無をもう一度問いたい。
検察側勝利の結果となったが、公判では「検事により心理的圧迫があった」と被告の供述調書が証拠採用されなかった。他の被告が自白したと虚偽の情報を告げて、供述を得ようとした違法な手法も明らかになった。特捜検察に注がれる視線は厳しい。捜査の反省点も自ら検証すべきだ。
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