政府はアフリカ南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への参加を検討している。現地の要望と安全を十分に見極めた上で、独立間もない国の建設のために何ができるか考えたい。
訪米した野田佳彦首相は国連の潘基文事務総長との会談で、南スーダンのPKOに司令部要員二人を派遣し、さらに調査団も送って陸上自衛隊部隊の派遣が可能か検討すると述べた。
潘事務総長は菅前政権の時から、陸自施設部隊の派遣を要請していた。
東日本大震災で日本は世界中の国・地域から支援を受けた。国内問題に追われ「内向き」になっているとみられているだけに、PKO参加は国際貢献に取り組む姿勢を強く示すことになる。
南スーダンは今年七月に独立し人口約八百万人、キリスト教の黒人系住民が主流だ。豊かな石油資源に恵まれているが、道路や水道、電気などインフラが満足にない。かつての独立運動家や海外から帰国した知識人が国造りに取り組んでいる。
PKOは紛争地域での和平合意の履行が主たる任務だが、最近は復興支援にも比重が置かれる。大地震が起きた中米ハイチでは、陸自の施設部隊など約三百五十人が派遣され、がれきの除去や道路補修に当たっている。
重機などの装備と土木技術を持つ陸自部隊の南スーダン入りが実現すれば、道路や橋、空港滑走路の建設や修復に尽力できるだろう。国連は韓国と中国にも同様の要請をしているという。
ただ南スーダンは分離独立前のスーダン(北部地域)との間で二〇〇五年まで内戦が続き、南北間にある油田地帯アビエイの帰属はいまだに確定していない。国境近くで武力衝突がしばしば起きるが、首都ジュバとその周辺では治安は保たれているようだ。内陸部の国であり、陸自部隊の要員、装備の陸揚げ港と輸送ルートをどう確保するかも難問だ。
調査団は二十四日出国した。現地の安全と、当局の受け入れ能力、内戦時代に流出した武器の回収状況などを綿密に調べた上で、陸自部隊の派遣に結論を出すべきだ。
日本のPKO五原則では、停戦合意が守られ、要員らの生命を守る必要最小限の武器携帯で活動に取り組めることが条件である。この原則が守れないほどの危険地帯であれば、陸自派遣を急ぐ必要はない。
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