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大震災と原発事故という未曽有の試練を抱えても、日本は決して「内向き」にはならない。世界の課題に貢献し続ける。野田首相が国連総会の演説に込めたのは、そんなメッセージに違い[記事全文]
「政権の1丁目1番地」から番外地になったかのようだ。民主党が掲げた地域主権改革について、野田首相は所信表明演説で「引き続き推進します」と、ひとこと述べただけだ。まるで、[記事全文]
大震災と原発事故という未曽有の試練を抱えても、日本は決して「内向き」にはならない。世界の課題に貢献し続ける。
野田首相が国連総会の演説に込めたのは、そんなメッセージに違いない。
首相は冒頭、震災にまつわる三つのエピソードを紹介した。
宮城県で研修中のインドネシア人看護師が、津波の直前に患者を避難させてくれたこと。
ブラジルの恵まれない子どもたちが、小銭を集めて日本に送ってくれたこと。
ケニアの大学生が追悼集会で「上を向いて歩こう」を合唱してくれたこと。
そして首相は「世界との絆を日本人は永遠に忘れない」と誓った。
戦後の日本は、先の大戦への反省から、平和国家をめざし、途上国の開発援助を積極的に展開してきた。
今回、世界中から救いの手が差し伸べられたのは、半世紀以上にわたる日本の活動への評価と無縁ではなかろう。
だからこそ、復旧・復興や原発事故の収束を急がねばならないなかでも、経済大国として持てる力を国際社会の課題に注ぎ続けるべきだと考える。
首相は新たな国際公約として(1)南スーダンの国連平和維持活動への協力(2)ソマリアの飢饉(ききん)への人道支援(3)中東・北アフリカの民主化支援のための10億ドルの円借款を表明した。この内容を率直に評価する。こうした努力が日本の国際的な地歩をより確かなものにするはずだ。
これに比べて、原子力安全に関するハイレベル会合での演説には大いに疑問がある。
「事故の教訓を世界に発信する」と宣言したのはいい。しかし、今後のエネルギー政策を具体的に語ることもなく、原発輸出の継続を宣言した。訪米前に米国紙に、原発の再稼働時期を「来夏に向けて」と明言したことと合わせて、菅前首相の「脱原発依存」の後退を図っているようにしか見えない。
菅氏が5月の国際会議で、自然エネルギーを拡大させる野心的な数値目標を示したのに比べて、何とも見劣りする。
前政権の何を引き継ぎ、何を変えるのか。首相は明確に国民に説明する責任がある。
国内では、復興増税や社会保障のための消費増税が議論されている。国連でアピールした対外支援についても、幅広い国民の理解と支持を得る作業が欠かせない。
外交日程は一段落し、明日から国会の予算委が始まる。その論戦が最初の試金石になる。
「政権の1丁目1番地」から番外地になったかのようだ。
民主党が掲げた地域主権改革について、野田首相は所信表明演説で「引き続き推進します」と、ひとこと述べただけだ。まるで、やる気が見えない。
そんな政権で今、改革は一つの節目を迎えている。国土交通省の地方整備局など出先機関の自治体への移管案の大枠を、今月末までに固める運びなのだ。
かねて、出先機関は自治体との二重行政や、予算の無駄遣いが批判されてきた。自民党政権も一部を自治体に渡したり、統廃合したりする方針を示しはしたが果たせなかった。
民主党政権はさらに踏み込んで、「原則廃止」を閣議決定している。なのに具体的には進まない。省庁側が「地方には受け皿がない」などと抵抗しているからだ。
それならばと、民主党政権は昨年暮れ、できるところから先行的に移す方針を決めた。以前から意欲を示していた大阪や兵庫など7府県でつくる関西広域連合と、九州地方知事会が、地方整備局、経済産業局、地方環境事務所の受け入れに名乗りをあげた。
これに、どう答えるのか。
組織も人員も、それに伴う予算も一緒に移せば仕事の質は落ちない。天下りや官製談合を続けてきた組織を、知事や議会、住民の目で監視できるようになる。地方側はそう唱える。
国交省などは東日本大震災や台風被害への対応を挙げて反論する。全国一律の指揮系統で人や機材を投入したから、早期復旧ができたし、国民の生命と財産を守れたのだ、と。
政府側の主張にも理がある。しかし、だからといって、自治体には対応できないと決めつけるべきではない。
近畿の府県は淀川水系の治水対策で協調できたし、震災対応でも速やかな救援で効果をあげた。県境を越えた広域連携を実践しつつあるではないか。
野田首相がいま震災対応を最優先に考えるのは当然だ。だが出先問題をはじめ、政府と自治体が役割をきちんと分担していくことは、長い目で見れば災害に強い国づくりにも役立つ。
政権交代から2年、自治体にかかわる政策を、企画段階から各省と知事らが話し合う「国と地方の協議の場」が法制化された。自治体の仕事のやり方を法律で縛る「義務づけ」も部分的だが廃止、緩和されてきた。
自民党ができなかった改革を民主党政権が進めてきた部分があるのは確かだ。だからこそ、さらなる前進を求める。