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天声人語

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2011年9月24日(土)付

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 近所の桜並木できのう、恒例の「健康診断」があった。先の台風が葉をさらったが、倒木や大きな枝落ちはない。老木たち「かかりつけ」の樹木医氏によると、街路樹を風から守るにはまず根を保護すること、危なければ風を通す枝切りが要るそうだ▼激しい雨風は列島に秋を置いていった。しつこい残暑が去り、いわし雲の空は水彩の妙。〈夕焼けてサーファー赤き波に乗る〉田島もり。そんな夏の残像は、朝夕の涼にあせてゆく▼けれど今年は、夏ばてが尾を引く「秋ばて」に要注意らしい。思えば、節電でわが身に無理をさせた。冷たい物を引き受けた胃腸は弱っている。大地震がまた来るというストレスも、通奏低音のごとく心身に響くという▼ならば火照る体を冷まし、乾いた心を潤そう。暑くも、寒くもない。春のような慌ただしさや、期待と落胆の山谷も少ない。私見だが、胸中の寒暖計が最も安定する数十日である▼〈たそがれは風を止めて/ちぎれた雲はまた/ひとつになる〉。オフコースの佳曲「秋の気配」で、小田和正さんは男女の別離を生地横浜の風景に重ねた。淡い喪失感は、秋が持つ別の味だ。〈大いなる河のように/時は流れ/戻るすべもない〉▼この彼岸、東北ではどれほどの人が真新しい遺影に手を合わせただろう。乱れたままのお墓も多い。流れる月日に抗し、亡き人の面影は濃くなるばかりかとお察しする。あれから三つ目の季節である。すっきりと晴れ渡る千金の、一日一日を大切に送りたい。

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