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天声人語

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2011年9月22日(木)付

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 東京・銀座の真ん中で、街路樹のケヤキが歩道をふさいでいた。長さ10メートルほど、端の太さは40センチ。二股の幹の片方が折れたらしい。処理作業の電動ノコがうなる。猛(たけ)る風雨に、すました街も一変した▼不意に揺れる大地も怖いが、にじり寄る台風も恐ろしい。沖縄の手前でゆるりと輪を描いていた15号は、我に返ったように勢いを増し、秋台風らしい速さで列島を縦断した▼帰宅ラッシュに重なった首都圏では交通網が乱れ、家路を断たれた群衆が駅に道路にあふれた。先の12号が残した紀伊半島の土砂ダムには一部決壊の情報がある。「先輩」が仕込んだ爆薬に15号が点火した形だ。震災の被災地にも、暴風雨は容赦なかった▼きのうは、1959(昭和34)年の15号、すなわち伊勢湾台風が発生した日でもある。東海地方で育ったせいか、小学校の授業でそう教わった。わが誕生日と同じかと落ち込みながら、大きな台風は9月半ばから実りの秋を襲う、と銘じたものだ。まだ気は抜けない▼海から空からと、水難の年である。各地の古老に「生まれて初めて」と言われては寄る辺ない。なるほど、文明のはるか前から独自の営みを重ねる自然は侮れない。だが人間には、悔し涙で綴(つづ)った教訓の束がある▼悪条件が重なると大災害になるが、一つでも除けば災害の規模は一けた小さくできる。お天気博士、倉嶋厚さんの教えである。猛威をかわすため、津々浦々に刻まれた爪痕をくまなく探り、次に消し去るべき条件を拾い集めよう。

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