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台風15号は日本列島を縦断して、各地に大きな爪痕を残している。この台風は雨に弱い都市部も直撃した。広い範囲に避難勧告や避難指示が出た。名古屋市では100万人がその対象に[記事全文]
原発事故で避難を強いられた人から、東京電力に対する損害賠償の請求手続きが始まった。1世帯あたり100万円の仮払い開始からほぼ5カ月。一刻も早く進めなければならない。とこ[記事全文]
台風15号は日本列島を縦断して、各地に大きな爪痕を残している。この台風は雨に弱い都市部も直撃した。
広い範囲に避難勧告や避難指示が出た。名古屋市では100万人がその対象になった。
11年前の東海豪雨では避難が夜になり、被害が拡大した。その教訓から名古屋市は今回、早めの対応をとり、人口の半数近くに避難を呼びかけた。
だが、勧告や指示を受けた人の多くが避難したわけではないだろう。100万人の避難場所を確保するのは難しい。
東海豪雨の後、名古屋市は全戸に洪水ハザードマップを配った。地域ごとに浸水の深さを色分けし、避難場所を指定した。「避難行動の目安」では、自宅が何階か、浸水が何メートルかによって、自宅にとどまる選択肢も示している。
避難を呼びかけられたらどう行動するか。ふだんからハザードマップを読んでおき、備えておきたい。
今月初めの台風12号では、90人を超える死者・行方不明者が出た。紀伊半島では豪雨で崩れた土砂が川をせき止め、何カ所も土砂ダムができた。そこに今度の15号による雨で、一部で決壊の危険が高まっている。
その一つ、奈良県五條市にある土砂ダムが決壊すれば、流域の20キロの範囲に土石流が押し寄せるという。
土砂ダムの警戒区域で暮らす人たちは、学校や公民館に身を寄せている。避難所での生活は半月になる。住み慣れた集落にいつ戻れるのか。疲労の色も濃い。せめてゆっくり休めるように、自治体は旅館などの宿泊施設を借り上げてもらいたい。
そうした土砂ダムには崩れた土砂に阻まれてなかなか近づけず、対策に長い期間がかかりそうだ。長引く避難を考え、災害救助法にもとづく仮設住宅の建設も急がなくてはいけない。
二つの台風に共通するのは、ゆっくりした速度で大量の雨をもたらしたことだ。
自治体は避難を呼びかけた後も、きめ細かな情報を提供し続けなくてはならない。
例えば、緊急地震速報や避難勧告を知らせるNTTドコモのエリアメールは、全国で300以上の自治体が使える。同社の携帯電話なら登録も必要なく、一部の機種を除いて自動的に受信する。こんな技術も役立ててゆきたい。
東日本大震災の大津波に続いて、相次ぐ台風被害だ。自然に恵まれた列島ならではの災害が続く。住民も自治体も、身近な対策を総点検しよう。
原発事故で避難を強いられた人から、東京電力に対する損害賠償の請求手続きが始まった。1世帯あたり100万円の仮払い開始からほぼ5カ月。一刻も早く進めなければならない。
ところが、早速いくつもの問題が持ち上がっている。
まず、請求手続きがあまりに難しく、繁雑なことだ。東電が約6万世帯に送った書類は、案内冊子が約160ページ、請求書類が60ページもある。
専門的な用語も目立ち、お年寄りが多い被災者からは「とても無理」との声が上がる。福島県双葉町が東電の説明会を拒否する事態まで起こった。
被災者の視点で賠償するという基本を忘れてもらっては困る。東電はきのうの会見で陳謝し、相談要員を増やすと説明したが、さらに工夫すべきだ。
ほかにも被災者を戸惑わせる内容が少なくない。請求書に添付する領収書などは原則として原本とされ、他の用途のために取っておけない。今回の請求は8月末までの損害が対象だが、「同一対象期間での、各項目の請求は1回限り」と書かれている。請求後、東電から送られてくる「合意書」の見本には「一切の異議・追加の請求を申し立てない」とある。
被災者を支援している日本弁護士連合会は、これらの問題点を指摘しつつ、各地の弁護士会が開く無料相談会などを利用するよう呼びかけている。東電に改善を求めるとともに、専門家による一層の支援を期待する。
賠償の中身についても、被災者から疑問や反発の声が出始めた。たとえば、避難者の精神的損害に対する賠償額だ。
有識者からなる政府の原子力損害賠償紛争審査会が中間指針で決めた基準は、最初の6カ月が1人あたり月額10万円(避難所で生活した期間は12万円)で、7カ月目から5万円に半減する。「仮設住宅への入居が可能となり、生活の不便さは小さくなるため」という。
しかし、被災者の多くは「精神的な負担は、避難が長引くにつれて重くなる」と訴える。避難所を出ると日常の生活費は自己負担になる。仕事を失ったことに伴う収入減は賠償されるとはいえ、基準を改める必要があるのではないか。
審査会はきのう、1カ月半ぶりに会合を再開した。政府が決めた避難区域以外の地域から自主避難した人への賠償や、避難区域内の不動産などへの賠償も、必要性は確認したものの具体的な基準作りはこれからだ。中間指針を柔軟に修正することを含め、検討を急いでほしい。