今年七月一日時点の都道府県地価調査(基準地価)によると、東日本大震災発生後の全国および東京圏と名古屋圏の地価は、下落率が拡大した。復旧・復興に向けて地価下落のメリットを生かそう。
三年前のリーマン・ショックは回復傾向の地価を直撃した。とくに地方圏の落ち込みがひどく二〇〇九年の基準地価の下落率は全国・全用途で前年比4・4%となった。その後一〇年は3・7%、今年は3・4%に縮小するなど改善してきた。
この一年の下落率を半年ごとに分けて見ると、全国の住宅地は前半の1・2%が後半は1・3%へ、商業地も1・7%が1・8%に拡大した。東京圏、名古屋圏の住宅地と商業地もそれぞれ0・1〜0・3ポイント悪化した。
これに対して大阪圏は住宅地は1・0%が0・7%に、商業地も1・4%が1・1%に改善した。近畿圏への人口流入が活発でこれがマンション需要などの増加につながっているという。大震災に加え深刻な原発事故が背景にある、と指摘する声もある。
住宅地を個別に見ると、東京圏では東京湾岸地区の高層マンションで買い控えの傾向が見られる一方、地盤が安定している武蔵野市などは下落率が縮小した。
名古屋圏では名古屋市千種区、名東区、昭和区などで下落地点がなくなった。西三河の刈谷、安城両市では上昇地点が現れた。
全国の地価はバブル崩壊後、二十年連続で下落してきた。景気回復の厄介な足かせとの声もあるが、むしろ政府や地方自治体、企業は地価下落のメリットを積極的に生かすことが大切だ。
大震災からの復旧・復興を実現する本年度第三次補正予算案の編成作業が始まった。港湾や鉄道、道路、通信設備から緊急避難施設、物資の保存倉庫、非常用発電設備などの整備が急務である。公共用地の取得を大胆に進め地域の防災機能を強化すべきだ。
自治体は市街地整備のほか雇用創出の一環として企業・団体の研究機関や既存産業を含めた工場の誘致に全力を挙げる。企業も可能な限り応じてほしい。
個人住宅建設は景気対策としても効果が大きい。七月で終了した住宅エコポイントの復活は不可欠である。さらに超円高対策を含めた景気へのてこ入れも重要だ。経済活性化は、地価対策にもつながる政策の最重要課題である。
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