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Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
41年前のイタリア映画「ひまわり」が再上映されると聞いて試写を見た。ご存じ、戦争から還(かえ)らぬ夫を捜し、若妻が旧ソ連を訪ねる悲話である。切ない調べが流れるタイトルバック。風にそよぐヒマワリ畑を、カメラはゆっくり左に動いていく▼地平線に至る黄色の海は、ウクライナで撮影されたという。花は500年前、北米から欧州に渡り、油の原料として広まった。最大の産地が旧ソ連で、映画には異郷を語る景色として登場する▼チェルノブイリ原発事故の汚染域にも、菜種と共に植えられた。土壌の放射能が油に移りにくいためだ。ただ除染の力は定かでなく、福島で実験した農水省の判定は「ほぼ効果なし」。根を深く張るので、地表近くの放射性物質は吸収しづらいらしい▼除染の早道は表土の除去だ。4センチまで削ると、セシウムの75%が除かれたという。森口祐一東大教授の試算では、除染対象の面積は最大で福島県の7分の1にもなる。気が遠くなる労力と費用に、改めて原発事故の罪深さを思う▼昨日、東京での「さようなら原発」の集会と行進には、大江健三郎さんらの呼びかけで大勢が参加した。壇上から作家の落合恵子さんが訴えたように、平仮名しか読めぬ子が「ほうしゃのうこないで」とおびえる現実、捨て置けない▼孫の将来を案じてか、敬老の日を脱原発にあてたお年寄りも多かった。大切な誰かを本気で守ろうと思えば、人は街に繰り出す。黄色を身につけた群衆が、波打つヒマワリ畑に重なった。