HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 27889 Content-Type: text/html ETag: "7f1639-53d8-528a4b00" Cache-Control: max-age=4 Expires: Sun, 18 Sep 2011 03:21:07 GMT Date: Sun, 18 Sep 2011 03:21:03 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):社説
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2011年9月18日(日)付

印刷

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

普天間移設―「正心誠意」で出直そう

まず、現場を踏む。当事者の声に耳を傾ける。それが野田首相のモットーではないのか。首相は組閣後、間もなく、東日本大震災の被災3県と、台風被害の大きかった紀伊半島を訪れた。[記事全文]

避難区域解除―住民の帰還は柔軟に

福島第一原発から半径20〜30キロ圏内の「緊急時避難準備区域」が、月内か来月初めに一斉解除される見通しだ。この区域は、原子炉が爆発した時に備え、すぐ避難できるよう、保育[記事全文]

普天間移設―「正心誠意」で出直そう

 まず、現場を踏む。当事者の声に耳を傾ける。それが野田首相のモットーではないのか。

 首相は組閣後、間もなく、東日本大震災の被災3県と、台風被害の大きかった紀伊半島を訪れた。北朝鮮による拉致被害者の家族とも面会した。

 しかし、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題では違う。

 新滑走路をつくるとされる名護市辺野古を訪れることも、県知事と会うこともなく、所信表明で、移設を決めた日米合意の踏襲を宣言した。

 近くニューヨークで初会談するオバマ大統領にも、同様の考えを伝える方針だ。

 日米合意に、名護市も沖縄県も反対し続けている。米議会の重鎮すら「非現実的で実行不可能」と断じている。

 それでも日本政府は、埋め立てのための環境影響評価の手続きを再開しようとしている。知事への埋め立て免許の申請を視野に入れてのことだ。

 背景には、米国政府からの強い要請がある。巨額の財政赤字を削るために、辺野古移設とセットとなった海兵隊のグアム移転経費を減らしたい議会に向けて、「具体的な進展」を示す必要に迫られているからだ。

 けれど、先々の成算もなく、アリバイづくりのように手続きを進めることに何の意味があるのか。沖縄の反発を一層強め、事態をこじらせるだけだろう。

 すでに米国の政府内にも、辺野古案の実現に懐疑的な声が出ている。首相はもっと現実を見据え、打開策を探るべきだ。

 日本政府内にはなお、自治体の裁量幅が広い一括交付金の創設などを誘い水に、地元の軟化を期待する意見がある。こんな相も変わらぬ「アメとムチ」では事態を打開できない。

 首相も国会で、振興策と基地受け入れをリンクさせることはないと明言している。その言葉通りに行動してほしい。

 ただ、野田内閣では、玄葉外相も一川防衛相も、厳しく言えば普天間問題はまだ「素人」の域を出ない。対米協調に傾斜しがちな外務・防衛官僚の意向に過度に引きずられることのないように注意が必要だ。

 野田首相は「中庸の政治」を掲げるだけあって、靖国参拝、憲法改正、集団的自衛権などの持論を封印している。前原政調会長が米国で打ち上げた武器輸出3原則の見直しにも、慎重な姿勢を続ける。

 普天間問題でも、政策の優先順位を見極め、バランス感覚を発揮してほしい。「正心誠意」の言葉通り、まずは沖縄の信頼回復から始めるべきだ。

検索フォーム

避難区域解除―住民の帰還は柔軟に

 福島第一原発から半径20〜30キロ圏内の「緊急時避難準備区域」が、月内か来月初めに一斉解除される見通しだ。

 この区域は、原子炉が爆発した時に備え、すぐ避難できるよう、保育所や学校は閉鎖され、仮設住宅も建てられなかった。子どもや要介護者は立ち入らないよう求められていた。

 爆発の危険が薄らぎ、そうした制約がようやくなくなる。

 もともと6万人近くいた区域の住民のうち、約2万5千人が避難中だ。安心して戻れる条件を整えるため、区域を抱えていた福島県内の5市町村はそれぞれ復旧計画をまとめつつある。

 約3千人の住民がほとんど避難した川内村は先日、計画を公表した。学校や保育所の再開に支障はないか、ゴミ収集はできるのか、携帯電話は通じるか……。村の職員が、暮らしに必要なサービスを指さし確認するような情景が目に浮かぶ。

 住民目線に立った、手づくり感あふれる仕事に敬意を表したい。住民と向き合い不安を取り除く主体は、国でも県でもなく、市町村である。

 住民の帰還が完了する時期について各市町村は、来年3月末に足並みをそろえる方向で調整しているという。年度の区切りであり、復旧計画の提出先である国も、制度や予算面で支援しやすい事情があるようだ。

 ただ、実施にあたっては柔軟に対応して欲しい。自治体によって状況や課題が違うからだ。

 たとえば、南相馬市は市役所が元の場所にあり、かなりの数の住民がすでに戻っている。

 一方、たとえば広野町は住民のみならず、役場機能も移転。上下水道という基礎的なインフラに不安を抱える。元に戻す作業の負荷は大きい。

 市町村だけでは力の及ばない部分を、国がしっかりと支援すべきなのは言うまでもない。

 最大の不安要素は除染の進み具合だ。

 この区域は原発の距離だけで単純に設定された。放射線量に限っていえば、避難先になっている郡山市や福島市などと同程度か低い場合もある。

 とはいえ帰還までに、学校などでの線量を下げる努力は必要だ。きめ細かいモニタリングと情報提供、技術と財政面での支援が不可欠となる。

 万が一、原子炉に異変が起きた時、住民をスムーズに避難させるプランも必要だろう。どこで受け入れるかなどの調整は、県の役割も期待される。

 原発と放射能への不安と向き合いながら、復興を加速させる。その知恵が試される。

検索フォーム