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東日本大震災の復興財源の柱となる臨時増税について、政府が選択肢を示した。増税対象として、政府税制調査会が(1)所得税及び法人税(2)この二つにたばこ税なども加える案(3)消費税の3案をまとめ[記事全文]
大震災の復興財源のひとつとして、日本郵政グループの株式売却が政府・与党内で取り沙汰されている。グループの持ち株会社「日本郵政」の株式は政府がすべて保有している。帳簿上の[記事全文]
東日本大震災の復興財源の柱となる臨時増税について、政府が選択肢を示した。増税対象として、政府税制調査会が(1)所得税及び法人税(2)この二つにたばこ税なども加える案(3)消費税の3案をまとめ、野田首相が消費税案を退けて2案に絞った。
政府が今後5年で必要と見込む財源は、2回の補正予算で確保した6兆円を除き、補正予算に流用した基礎年金財源分などを加えて16兆円前後に達する。
まずは復興債を発行するが、その返済財源を臨時増税と歳出の見直し、国有財産の売却などで確保する。増税分は国と地方合わせて約11兆円になる。
私たちは、所得税と法人税を中心に検討するよう主張してきた。消費税は今後、膨張が避けられない社会保障費に充てるべきだと考えるからだ。野田首相の判断を支持したい。
所得税の増税期間について、政府税調は5年と10年の2案を示したが、野田首相は「10年」を指示した。たばこ税の増税を絡めない場合、本来の納税額から5.5%増やすことになる。
法人税では今年度に予定していた5%幅の減税と租税特別措置の縮小を実現した上で、3年間に限って納税額を10%増しにする。増税期間を短期間にとどめることで、景気への悪影響や空洞化への懸念に配慮した案になった。
議論の舞台は、民主党税制調査会に移る。2年前の政権交代後、政策決定を政府に一元化する方針に従って廃止したが、政策決定にかかわれないという党内の不満を受けて野田政権が復活させた。
党内では、税調の役員を含め増税への反対・慎重意見が少なくない。もちろん、増税額を抑える取り組みは大切だ。自公両党を加えた3党で合意した子ども手当の見直しや高速道路無料化の見送りにとどまらず、歳出はまだまだ見直せるはずだ。
政府資産の売却では、JTや東京メトロの政府保有株などが候補に挙げられている。ほかにもないか検証したい。
だが、増税から逃げようとするあまり、売却の条件が整っていない資産に飛びついたり、特別会計から安易に借金したりしては本末転倒である。
「復興に伴う負担を後の世代に先送りしない」という理念は、すでに成立した復興基本法や民自公の3党合意でも確認されている。政府のムダを徹底的に削る作業を進めつつ、必要な増税は国民に正面から問いかけなければならない。
税調を復活させた野田新体制の真価が問われる。
大震災の復興財源のひとつとして、日本郵政グループの株式売却が政府・与党内で取り沙汰されている。
グループの持ち株会社「日本郵政」の株式は政府がすべて保有している。帳簿上の価格は9.6兆円。このうち法律で許される3分の2を簿価で売ることができれば6.4兆円の収入となる。復興に必要な財源の4割以上が賄えるという皮算用だ。
日本郵政をめぐって、民主党政権は株式売却の凍結法を成立させる一方、郵政改革を抜本的に見直す法案を昨年の通常国会に出した。その成立をみて資産売却を解禁する段取りを描く。
しかし、見直し法案には、小泉政権下で民営化を断行した自民党など野党の反対が根強い。そこで、復興のための増税圧縮に絡めて成立を急ごうという思惑が垣間見える。
これは筋がよくない。
見直し法案では、持ち株会社と4子会社(郵便局、郵便事業、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)の組織形態を改め、郵便局と郵便事業を持ち株会社と統合する。銀行と生保の株はすべて売却する予定だったのを、3分の1は持ち株会社が維持し、間接的に政府保有を続ける。民間との競争状態をみながら業務の解禁などを判断する民営化委員会を廃止し、新規事業を自由化する――などが柱だ。
当初の民営化の枠組みに問題があれば手直しは必要だ。現行法で予定されている2017年までの株式売却が現実的かどうかなど再考の余地がある。
しかし、今の見直し法案のままでは民営化の狙いを超えた金融の肥大化につながる恐れがある。特に中小金融機関などとの公正な競争を守るためには、民営化委員会の仕組みは今後とも不可欠だろう。法案は大幅に修正すべきだ。
そもそも、今の日本郵政の経営状態で満足のいく株価で売れるのか、疑問が拭えない。特に、日本通運との宅配便事業の統合が迷走するなど郵便事業の立て直しが難航している。収益面での金融依存を抑えるためにも、各事業から利益をあげる構造を築く必要がある。まさに経営の実力が問われている。
ゆうちょ銀行とかんぽ生命が保有する国債は計220兆円を超し、発行残高の約3割にもなる。世界的な政府債務危機の広がりで、このような偏った運用が今後も安泰とは言い切れなくなってきた。
さまざまなリスクを克服する高い経営力をつけ、投資家に評価され、市場から待望されるようになることが先決だ。