米大統領専用機の飛行計画をブログに掲載したり夜勤中に居眠りするなど航空管制官の不祥事が相次いでいる。日本の空の信頼が根本から揺らいでいる。政府は原因究明と再発防止策の確立を急げ。
一連の不祥事はどれもが重大事件・事故に直結する恐れがあった。羽田空港の管制官は米軍無人偵察機の飛行計画なども掲載していた。那覇空港の管制官は飛行中の航空機からの懸命の呼び出しに応じなかった。
羽田の場合は高度の機密情報の漏えいであり、今後の日米外交に悪影響を与えかねない深刻なものだ。国家公務員法の守秘義務違反に抵触する可能性があるから刑事告発は避けられまい。
那覇の事例は十分以上も居眠りをしたという。二人態勢勤務だったが別の管制官はなぜ席を外していたのか。交信を求めた貨物機は無事だったが、管制への信頼を損なった点で責任は重大だ。
七月には東京航空交通管制部の管制官が投稿サイトに内部施設のツアー募集を掲載し見学させていた。昨年十月、福岡航空交通管制部では職場見学に来ていた中学生に飛行中の航空機と無線交信させていた。どのケースも国民はあきれるばかりである。
管制官は国土交通大臣に代わって空の安全を守る国家公務員だ。専門知識とコミュニケーション能力、空港周辺の天候や飛行機の集中状況を瞬時に見極める判断能力などが必要な専門職種である。
それだからこそ管制官に慣れやおごりがあってはたまらない。
国交省は七月の不祥事を機に外部有識者による「適正化委員会」を設置して原因究明と再発防止策を検討中だ。今月中に対策をまとめる予定だったが、立て続けに発生した不祥事を追加してあらためて抜本策を策定する方針だ。
日本の空は今後も過密化が進む。全日本空輸、日本航空はじめ国内各社は中小型機に切り替えており、この十年間で航空機数は一・五倍になった。成田・羽田両空港の発着枠拡大で国内外の格安航空会社(LCC)の参入も活発化することは確実である。
空の安全と信頼は管制官の資質向上だけで達成できるものではない。やはり航空行政全体の中でとらえていく必要がある。
国交省は航空自由化推進の下、国内航空会社の体力強化と地方空港の活性化を重点施策に取り上げている。その方向は妥当だが、この際、空の安全と信頼の向上を最優先課題に取り上げるべきだ。
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