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首相になって人が変わった政治家に、池田勇人がいる。官僚的で尊大との世評を気にかけ、低姿勢に徹した。めがねは銀縁に、背広はダブルからシングルにし、芸者遊びとゴルフを断ったと、『戦後日本の宰相たち』(中央公論社)にある▼ここ数代は変わる間もなく消えたが、野田首相はどうだろう。初陣の所信表明は二つの点で注目された。新リーダーの気構えと、語り部の芸である。ひそかに期待もしたが、新味に欠ける30分だった▼震災が生んだ献身、忍耐の美談から、「日本人の気高き精神」や「日本人として生きていく誇り、明日への希望」を見いだせるという。野田色はここぐらい。先の「どじょう演説」を超える工夫はなく、弁士としての華も感じなかった▼辻説法が政治活動の原点という弁舌の人なのに、ここまで記者会見は就任時だけ、囲み取材は受けず、メディアの声かけにも無言の日が多いそうだ。内気な青年に戻ったかのような変わり身はおかしい▼その代わり、「官邸かわら版」なるブログが登場した。夏休みの絵日記に例えては小学生に悪いが、初回は「きょうぼくは……」の水準だ。一方的な発信ではなく、火花が飛ぶ国会論戦、記者団との丁々発止に時間を割いてほしい。駅前で鍛えた声が泣く▼他方、首相へのヤジも小学校の放課後を思わせた。罵声奇声の主は、下野(げや)の間に変わるべき面々である。政権交代から早3代目というのに、昔ながらの議場風景にわが目を疑う。めがねでも変えてみるか。