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天声人語

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2011年9月13日(火)付

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 四季の移ろいに、愛した人の不在を思い起こすことがある。〈季節(とき)はめぐりまた夏が来て/あの日と同じ流れの岸/瀬音ゆかしき杜(もり)の都/あの人はもういない〉。仙台はいい歌に恵まれた▼ステージは、鎮魂の響きをたたえた「青葉城恋唄」で始まった。食道がんを克服した桑田佳祐さん(55)が、完全復活の舞台に選んだのは宮城県利府町の総合体育館。6月まで遺体安置所だったそのアリーナから、この人ならではのパワーで、からりとエールを送った▼「去年、命を一つもらいました。ライブが近づくにつれ、復興支援とか慰問とか、おこがましいんじゃないか、俺にできるのかとクヨクヨしました。きょうは、私と一緒に元気になろうぜの会にしましょう」。ここでの歓声が一番熱かった▼震災半年の節目に輝いたのは、女子サッカーも同じだ。無敗、アジア首位の成績でロンドン五輪出場に花を添えた。歌える人は歌い、走るべき者は走る。こうして、今の日本はどうにか持っている▼つい比べ、泣きたくなるのが政治の惨状である。すぐ辞めた経産相は憎むべき放射能でふざけ、防衛相は「私は素人」と言い放つ。民主党の国対委員長は、臨時国会を早じまいする理由を「内閣の態勢が不十分」と語ったらしい▼国の将来を論ずべき政治家が論じていない現実を、野田首相はどう見ていよう。だんまりこそが安全運転と勘違いし、雄弁を封じれば、ここ何代かと同じ轍(てつ)を踏みかねない。たちまち〈あの人はもういない〉である。

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