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3・11から半年 復興へ政府は目に見える支援を(9月10日付・読売社説)

 東日本大震災から、あすで半年になる。

 被災地では復旧・復興に向けた懸命の努力が続いている。だが震災の爪痕は深く、思うように地域再建の青写真が描けていない自治体がほとんどだ。

 避難指示が出ている福島第一原子力発電所周辺では、役場と住民がそっくり移転しており、帰郷の見通しも立っていない。

 野田首相は就任の記者会見で、被災地の復旧・復興と原発事故対応が「何よりも最優先だ」と述べた。8日は福島第一原発を視察した後、佐藤雄平福島県知事に、事故で放出された放射性物質の除染を早急に進めると確約した。

 菅前政権の震災対応の遅れに被災地はいらだちを募らせてきた。被災地の再生へ、政府は迅速かつ強力な復旧・復興支援を、目に見える形で推進すべきだ。

 ◆瓦礫処理と除染がカギ

 人口16万の宮城県石巻市は、津波被害で4000人近くが死亡または行方不明になった。

 中心部の瓦礫(がれき)撤去は終わり、商店も再開し始めた。住宅街や主要道路の瓦礫も片づいた。

 だが、郊外に出ると、農地などに未処理の瓦礫が散乱し、仮置き場には搬入された瓦礫が山積みになっている。大量のハエも発生、駆除に手を焼いたという。

 今後、倒壊した家屋や事業所の解体が進めば、仮置き場が収容能力を超えてしまう恐れがある。市は県と協議し、焼却炉の新設と最終処理場の確保を急いでいる。

 膨大な瓦礫の処理問題が復興の妨げになっている。政府は自治体の負担軽減に、最大限の努力を払う必要があろう。

 福島県では、原発事故の収束なくして復興はありえない。原発は今、原子炉の安定冷却が進行中で、新たな放射性物質の放出はほとんどなくなっている。来年1月を目標とする「冷温停止」を確実に達成しなければならない。

 原発避難住民の帰宅に道筋をつけるには、地域の除染が不可欠だ。避難対象地域以外でも汚染度の高い場所があり、住民の健康への影響が心配されている。

 校庭や農地などは直ちに土壌改良に取りかかる必要がある。表土を5センチ撤去すれば放射性セシウムは10分の1に減り、そこへ新たな土を盛れば元の100分の1に低減できると専門家は指摘する。

 政府は自治体に丸投げすることなく、率先して除染作業を進めていってほしい。

 ◆生活の安定取り戻そう

 工場などの生産機能は回復しつつあるが、雇用環境は依然、厳しい。震災による失業者は東北3県で7万人以上と推定される。

 復旧事業で求人は増えている。だが、震災前の就業経験を生かす仕事が見つからない。そろそろ失業手当も切れるころだ。多様な復興事業を本格化させ、新たな雇用を創出することが求められる。

 病院や介護施設は甚大な被害を被った。被災地はもともと医師不足が深刻な地域で、住民の高齢化も進んでいる。この半年、医療・介護関連団体が緊急の人的支援をしてきたが、継続は難しい。

 電子カルテなどのIT(情報技術)活用で連携態勢を強化し、効率的に人材を配置すれば関連施設の大胆な再編が可能になる。

 政府も特区などの法整備や財政措置で後押しし、医師などの人材が集まるような医療・介護の先進モデル地域を作るべきだ。

 仮設住宅の建設が進み、多くの人が避難所生活から解放された。だが、仮設や公共住宅に移った後のケアも重要だ。阪神大震災では仮設や「復興住宅」で高齢者の孤独死が相次いだ。悲劇を繰り返してはならない。

 ◆災害への備えを教訓に

 東日本大震災による死者は9日現在、1万5780人、行方不明者は4122人に上る。

 亡くなられた方のご冥福を心からお祈りする。行方不明の方が一日も早く見つかれば、と願う。

 「災害列島」日本では、今月も台風12号で100人を超す死者・行方不明者が出た。この半年、改めて自然災害の恐ろしさと、それへの備えの大切さを()みしめた人は多かっただろう。

 防災の日の1日、35都道府県で51万人が訓練に参加した。社員全員の安否確認や、帰宅困難の事態を想定した現実的な訓練を実施した企業、公的機関もあった。

 読売新聞の世論調査では、震災後に講じた対策として「飲料水や食料の備蓄」「家族同士の連絡方法を確認」などを挙げた人(複数回答)が多かった。

 国や自治体に望む取り組みでは、「原発の安全対策」「安全な避難経路や避難施設の確保」などが5割を超えている(同)。

 日頃の備えを怠らず、その時には的確迅速に避難する、そして支え合って災害を乗り越える――。大震災からの教訓としたい。

2011年9月10日01時28分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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