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天声人語

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2011年9月9日(金)付

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 約4万の仮設住宅に、明日を描けぬ人々が暮らす。2万人は親類縁者に身を寄せ、1万人が旅館やホテル、数千人がなお避難所にいる。震災から半年後の「住まい」は、砕かれた将来設計の象徴だ▼被災者ならずとも、多くの人生観が揺らぎ、企業は経営の見直しを迫られた。ところが、平成を災前と災後に分かつこの「断層」を楽々またぎ、素知らぬ顔で続くものもある。たとえば、埼玉県朝霞市で進む国家公務員宿舎の建設計画だ▼さいたま新都心で働く職員のため、米軍キャンプ跡地に13階建て2棟(計850戸)を造る。総事業費は百億円強。2年前の事業仕分けで凍結となりながら、今年度予算で「解凍」され、このほど着工した。未曽有の災害を経ても再考せぬ感覚が解せない▼昨年末に建設を認めた財務大臣は、どじょう首相その人である。財政危機の下、国民に復興増税を求めておいて、公僕の、公僕による公僕のための低家賃住宅では、示しがつくまい▼公共事業の暴走を止めるかと期待された政権交代なのに、鳴り物入りの仕分けもこれしきのものらしい。朝霞の場合、事業費は古い宿舎の売却で埋め合わすというが、大企業が社宅を手放すご時世に、そもそも官舎なるものが必要だろうか▼住み心地の良い家が、良い公務につながることもあろう。ただし平時の話である。国の正念場にも微動だにしない最強の「耐震住宅」は、増税論議をBGMに鉄骨を組み、2年後に完成する。住み心地がよかろうはずもない。

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