HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19839 Content-Type: text/html ETag: "ddfe74-4814-16b8fa00" Cache-Control: max-age=4 Expires: Wed, 07 Sep 2011 22:21:43 GMT Date: Wed, 07 Sep 2011 22:21:39 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2011年9月8日(木)付

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 近所のスーパーにきのう、北海道産のサンマが一匹98円で並んだ。鉛青色に光る「短刀」を塩で焼き、大根おろしとスダチを添えた。季節をほおばるとはこのことだろう。秋が深まるにつれ、魚影は三陸、銚子沖へと南下する▼今季はしかし、漁場と食卓の間に新たな網が張られる。字面も忌まわしい放射能測定。漁期を前に、水揚げ港では抜き取り検査が強化されるという。あらぬ風評を避けるべく、事故原発から100キロ内では漁も控えるそうだ▼受難は山の幸にも及ぶ。福島産の野生キノコやクリ、イノシシ肉から基準を超す放射性物質が出た。幸い、早場米は何事もなく出荷されたが、一般米の検査はこれからだ。数年来、会津米を愛食しているので気にかかる▼食卓を落ち着かせるのは、何より理屈の通る監視と、誠実な情報だろう。「売っているなら安全」と思えば、消費者のストレスは和らぐ。店頭での抜き打ち検査も合わせ、食の秋を守り抜きたい▼〈平らげて骨美しき秋刀魚(さんま)かな〉田中節夫。こんな年だからこそ、三陸の滋味をつつき、福島の新米をお代わりするのもいい。舌が喜び、被災地に資する。それもこれも、陰りなき情報開示が前提だ▼きょうは二十四節気の白露にあたる。残暑で草露の輝きも濁りがちだが、旬の味ぐらい穏やかに楽しめぬものか。セシウムやら何やらには、四季の恵みを汚すなと訴えたい。佐藤春夫の「秋刀魚の歌」を借りて、〈あはれ/秋風よ/情(こころ)あらば伝へてよ〉と念を押しておく。

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