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東日本大震災を受けて、国土交通省は東北地方の高速道路を対象に、すべての車両を無料にする方針だ。第3次補正予算に必要額を盛り込むという。これは再考すべきだ。このところの場[記事全文]
間もなく訪れる丸山陽子さんとの別れを思うと、寂しくなってしまう人も多いことだろう。陽子は、来月1日まで放送されるNHKの連続テレビ小説「おひさま」の主人公だ。朝ドラとも[記事全文]
東日本大震災を受けて、国土交通省は東北地方の高速道路を対象に、すべての車両を無料にする方針だ。第3次補正予算に必要額を盛り込むという。
これは再考すべきだ。このところの場当たり的な高速道路政策の功罪を検証する作業が先ではないか。財政難のなか、年に1200億円もかかるだけに、なおさらである。
震災対策では6月、東北地方で高速に乗り降りするトラックとバス、および被災証明書などを持つ車両を無料にした。このうちトラック・バスの優遇策は8月末で打ち切られた。目的地が東北ではないトラックが、対象地域内でいったん降りてから乗り直し、通行料全体を免れる悪用が相次いだからだ。
被災者の支援策は来年6月までの予定だが、停電しただけで証明書を出す市町村が続出したため、各地で予想外の渋滞が生じている。津波の被害が深刻な被災地からは「車を流されたままで恩恵を受けられない」「渋滞でかえって不便になった」といった声も出ており、国交省も制度を見直す考えだ。
この二つは緊急対策として高速道路会社の負担で行われたが、拙速な対応が裏目に出たと言える。ここでいったん立ち止まり、猫の目のような高速道路政策を白紙から再検討したい。
皮切りは08年秋、ガソリン高騰への対策として自公政権が打ち出した料金割引制度だった。翌年春には、無料化を唱える民主党への対抗とリーマン・ショック後の景気対策で「休日上限1千円」を始めた。政権交代を果たした民主党も10年夏、公約に従って地方の約2割の路線で無料化を追加した。
震災対策の財源を確保するために「休日1千円」を廃止し、地方での無料化を凍結したのが今年6月。かわって東北地方の無料化が始まった。これがおおよその流れだ。
料金の割引や上限制、無料化で対象路線の利用者や運輸業、沿線の観光地などは潤う。半面、渋滞や事故の増加、地球温暖化対策への逆行、鉄道やフェリーといった他の交通機関の乗客減などマイナス面も少なくない。これまで政府が投じた予算は1兆数千億円に達する。
3次補正での無料化の主な狙いは東北の観光振興という。ならば、すべての交通機関に平等となるよう、旅行補助の仕組みを整える方が合理的だ。
復興財源として臨時増税が検討されるほど財政が厳しいことを踏まえ、政策の費用対効果をしっかり見極めないと、納税者は納得できない。
間もなく訪れる丸山陽子さんとの別れを思うと、寂しくなってしまう人も多いことだろう。
陽子は、来月1日まで放送されるNHKの連続テレビ小説「おひさま」の主人公だ。朝ドラとも呼ばれるテレビ小説は、今年で50周年を迎えた。
第1作の「娘と私」が放映されたのは、「もはや戦後ではない」とうたわれて5年後の1961年。テレビが街頭から家庭に入り、ほどなくだんらんの中心になっていった時代だ。
朝ドラから、明治から昭和までを明るく生きた女性を描いた「おはなはん」のような国民的番組が生まれた。1980年代には、関東で平均視聴率が50%を超えたお化け番組「おしん」が登場。貧しさに耐えながら成功を収める女性の姿は、海外でも人気を博した。
その後、生活の多様化やネットの影響で家庭におけるテレビの位置づけは変わり、朝ドラもお化け番組ではなくなった。民放ドラマも勢いを失い、もう一つの国民的ドラマ「水戸黄門」の打ち切りも発表された。
「おひさま」放送中に地上デジタル放送への移行もあった。何かと節目の重なったこのドラマは戦前、戦中、戦後を仕事を持って生きた女性を描く朝ドラの王道を歩み、視聴率も近年の作品としては上々だ。
半年間という長丁場に見合う丁寧な作りで、主人公はもちろん、女学校時代の友人たちや、幼なじみでいま一つさえない青年にも、ドラマ1本分ぐらいの物語がある。いろんな靴を通してそれを履く人物を描き出すような細かい演出もある。
NHKには、被災地からこの番組を楽しんでいるという声が多く届くという。困難な時代を善良な人々が懸命に生きている姿があるからだろう。
歴史上の人物を軸にした大河ドラマに対し、朝ドラは普通の生活者を女性中心に描き、共感を呼んできた。陽子も、ごく普通に喜び悩む女性だ。
善人ばかりで退屈だという声も聞くが、朝も早くから男女の愛憎劇というわけにはいかないだろうし、他の時間帯や民放も含めれば、ドラマの多様性を示す一つといえる。
韓国ドラマは、純愛ものでも歴史ものでも、物語や人物の輪郭をはっきりさせた作りで、日本での人気を根づかせた。
画像が細やかな地デジ時代に日本のテレビは何をめざすか。
タレントをただ並べ、話題の原作に飛びついたり、流行をちりばめたりする番組はもう、たくさんだ。茶の間をうならせる映像の力を見せてほしい。