HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 06 Sep 2011 22:08:30 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:台風12号 生死分ける避難の遅れ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

台風12号 生死分ける避難の遅れ

 台風12号に伴う大雨による土砂災害などの犠牲者が出た地区は、避難勧告すら出ていないところがあった。危険地域からの避難は一刻を争う。“空振り”を恐れず、迅速な対策をとるべきである。

 被害と犠牲者は和歌山、奈良、三重県の紀伊半島中山間地域に集中する。全国的にも雨の多い、山と森に覆われた地域である。今回のような長雨で川は一気に増水、下流部市街地の浸水や、地層が水で飽和状態になり、がけ崩れや地滑り、土石流など土砂災害を起こすのは容易に想定される。

 和歌山県田辺市の犠牲者が自宅と共に巻き込まれたように、土砂災害は一瞬にして起き、ほとんど逃げるいとまはない。前兆としてがけの亀裂、斜面の小石の落下、流水のにごり、渓流の水位の急激な変化などがある。だが気象や地質の専門家でない一般住民が、これらの前兆で災害の切迫を察知するのは無理である。

 国は今回の災害でも早急に全容をつかみ、適切な復旧対策を講じるのは当然である。しかし紀伊半島を含め土砂災害の危険箇所は全国に無数にある。砂防ダムや急傾斜地の崩落防止など、ハード面の対策完備は不可能だろう。

 台風の進路、雨量などの予測技法は近年、大幅に充実した。地域ごとの土砂災害警戒情報も提供される。現状ではこれらに基づき、危険地域の住民が避難する体制を確立する以外にない。

 自治体が早め早めに避難勧告・指示を出すのが第一である。ところが、土砂災害や濁流で犠牲者の出た田辺市や奈良県十津川村の被害地域などでは、避難勧告すら出ていなかった。結果的に、住民を危険にさらしたといえる。

 幕末の天誅(てんちゅう)組騒動で名高い十津川村は一八八九年八月、集中豪雨により複数箇所で山崩れが起き、百六十人以上の死者を出した。一部の現地復旧を断念した人々は北海道へ移住した。この記憶は関係者に忘れられたのだろうか。

 三重県大台町は台風12号で三日早朝から、町内各地区に次々と避難勧告などを出した。二〇〇四年九月、同町に含む旧宮川村を襲った台風21号による土砂災害で七人が死亡・不明になった教訓からである。空振りの批判を恐れず、首長が決断した。

 巨大地震に続く台風。中部・関東の中山間地域に土砂災害の危険地域も多く、伊勢湾台風の記憶もよみがえる。各自治体はいま一度、肝に銘じてほしい。

 

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