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2011年9月7日(水)付

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被災企業支援―連帯の金融を広げよう

経済基盤を根こそぎ奪われた被災地域の再生へ、金融にも新たな発想が求められている。金融復興の焦点である二重ローン問題では、政府が旧債権の買い取り機関を被災各県に設けること[記事全文]

日本版GPS―巨額の投資に見合うか

カーナビなどですっかりおなじみの米国の全地球測位システム(GPS)のような、地上の位置を知るための測位衛星システムを自前で持つかどうか。日本の宇宙開発の大きな課題として[記事全文]

被災企業支援―連帯の金融を広げよう

 経済基盤を根こそぎ奪われた被災地域の再生へ、金融にも新たな発想が求められている。

 金融復興の焦点である二重ローン問題では、政府が旧債権の買い取り機関を被災各県に設けることになった。

 だが案の定、買い取り価格をめぐって袋小路に陥る懸念が出ている。債権者の金融機関は高く売り、見込まれる損失を転嫁したい。逆に買い取り機関側は安く抑えたい、という構図だ。

 にらみ合いで時間を費やしている場合ではない。被災企業の再建に向けた金融機関側の貢献度合いなどを加味して総合的に決断するほかない。関係者は復興を加速するという大局に立ってほしい。

 ただ、被災企業にとっては旧債務の処理にメドがついても、資本の欠乏という壁がある。借金して設備を買おうにも担保がない、といった八方ふさがりの話が被災地にはあふれている。

 注目したいのは、被災企業と個人マネーを直接結ぶ取り組みだ。「損失も覚悟のうえで復興を支援する」という新たなお金の流れを作り、金融機関の融資との相乗効果を生み出したい。

 すでに、商品の購入を先払いすることで養豚場や水産加工場の再建を助ける動きがある。カキ養殖などのオーナー制度も広がっている。

 被災企業ごとにファンドを設け、資金集めを支援しているのは、音楽CDファンドで実績のあるミュージックセキュリティーズ(東京)だ。1口1万円で、出資金と寄付金を5千円ずつ出してもらい、被災企業の自慢の製品などで配当する。

 被災地の資源を生かす魅力的な企業家を発掘し、全国の人々からの投資という形で息の長い連帯関係を結ぶ。これは事業者の復興への強い動機付けにもなる。販路や資金面でハンディを負う被災企業の基盤を強化する可能性も秘める。

 NPOを含む多様な担い手が知恵を絞り、埋もれた企業を掘り起こしてほしい。

 既存の金融機関や行政との連携も深めたい。投資家への税制優遇など、政策面で後押しする価値は大きいはずだ。

 一方、復興支援を語る投資詐欺が増えている。実に腹立たしいが、投資する側は「本物」を見極める目を鍛えたい。

 被災の情報は具体的か。投資先の事業者と対話したり、現地を訪ねたりして実態を把握する機会はあるか。リスクの説明は十分か。無理に大口の投資を勧めていないか――。こうした点をしっかりチェックしつつ、共感と連帯の金融を広げたい。

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日本版GPS―巨額の投資に見合うか

 カーナビなどですっかりおなじみの米国の全地球測位システム(GPS)のような、地上の位置を知るための測位衛星システムを自前で持つかどうか。

 日本の宇宙開発の大きな課題として浮上している。

 野田首相は、民主党代表選の演説で直木賞を受賞した「下町ロケット」を取り上げるなど、フロンティアとしての宇宙開発に意欲を見せている。日本の将来と国民生活を見据えた方針を示してほしい。

 宇宙開発戦略を検討してきた政府の宇宙開発戦略本部の専門調査会は先月、このシステムを唯一の「最重要課題」とし、それ以外の多くの計画を見直す報告書をまとめた。

 自前のシステムがあれば、GPSを補い、精度が今の10メートルから1メートル以下に向上する。

 問題は約2300億円ともいわれる巨額の費用だ。それに見合う成果が得られるのか。さまざまな観測衛星から小惑星探査機はやぶさまで、広い宇宙開発の中で優先順位をどう位置づけるか。調査会では、報告書に異例の強い反対意見が出た。

 日本の衛星は準天頂衛星と呼ばれ、1日8時間日本の上空にくる軌道を回る。技術実証のため「みちびき」が昨秋、打ち上げられた。日本を24時間カバーして、米GPSの信号と合わせて高精度を得るにはあと2機、GPSに頼らずに自前で測位するには計7機が必要だ。

 文部科学省、国土交通省など関係府省の政務官級のチームでみちびきの検証成果を見ながら今後の進め方を検討するはずだったが、大震災もあって検討は止まったままだ。

 調査会はその評価結果もないままに、大震災を受けて新たに災害時の安否確認や避難誘導などの目的を打ち出した。

 事実上の偵察衛星である日本の情報収集衛星も、安全保障と並んで防災目的を掲げながら、大震災でどう役立ったかはっきりしない。防災を予算獲得のための名目にしてはならない。

 衛星による測位システムは米国に続き、欧州やロシア、中国も整備を進めるなど、国際的な関心は高い。しかし、欧州の計画は民間が撤退し、資金難から大幅に遅れるなど、決して容易ではないことも事実だ。

 日本でも、産業化の見通しが立たずに民間が抜け、政府内でも引き受け手がなくて難航した経緯がある。

 宇宙にかかわる人たちの内輪の論理だけでは「宇宙ムラ」になりかねない。調査会は非公開だったが、開かれた議論こそが重要だ。

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