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9月6日付 編集手帳

 窪田空穂(うつぼ)の歌を思い出すのは、いつもきまって大きな災害のあとである。〈(かな)しみは身より離れず人の世の愛あるところ添ひて潜める〉◆幸せに暮らしている人の、幸せの頂点を狙って不意をつこうと、厄災は気配を消し、じっと隙をうかがっている。そう感じるときがある。台風12号で発生した大水に流されて亡くなった和歌山県那智勝浦町の観光協会職員、寺本早希さん(24)はその日が結納の予定であったという◆父親で町長の真一さんが町役場で取材に答える姿をテレビで見た。町民全体の安否確認と救護に全神経を傾けねばならない立場からだろう。長女を亡くし、夫人も行方不明のその人が、「ここ(役場)では、そういう(私的な)ことは胸にしまって表に出したくない」と、静かな口調で語る言葉に胸を突かれた◆和歌山、奈良の両県を中心に死者は37人を数え、50人以上の行方がいまも分かっていない。避難指示や避難勧告の遅れも被害を大きくした一因といわれる◆豪雨は北海道に移りつつあるという。なじみの川、なじみの崖に〈添ひて潜める〉厄災にわずかな隙も見せない、細心の注意が要る。

2011年9月6日01時11分  読売新聞)

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