東日本大震災は首都圏では「帰宅難民」を発生させた。「防災の日」には避難誘導訓練が実施されたが、子育て家庭にとっては保護者不在時の子供の安全確保が課題だ。心構えを家族で確認したい。
大震災の揺れは首都圏では鉄道網と通信網をマヒさせた。三菱総合研究所の分析では、約六百万人が徒歩で帰宅、約二百六十万人が帰宅を断念した。
子供たちも帰宅難民になった。東京都教育委員会の調査では、公立小中学校の一割超で、児童が夜を明かした。都立高校などでは約八千人が学校に残った。東京私立中学高等学校協会によると、都内の私立二百一校で約二万八千人が泊まった。
都立高などでは、対策に食料や毛布など備蓄が進められている。都は私立校や保育所などにも備蓄品購入費の一部を補助する。
被災体験を教訓として備えに生かすことは行政の責任である。
もうひとつ教訓がある。公立校では、下校判断に学校でばらつきがあり混乱した。小中学校では保護者の迎えを待たず、集団下校させた学校があった。保護者が帰宅できず子供だけで余震が続く夜を明かすことになった。
共働き世帯が増え、昼間は保護者が不在のケースは少なくないが、それを想定していなかった。通信網のマヒで保護者と学校とで状況確認もできなかった。
都教委は、基本的に子供たちを保護者に引き渡すルールに統一する。これなら連絡が取れなくても迎えに行くまで学校にいると分かる。現実的な対応だ。
課題は残る。地震発生時は、小学校低学年などは既に下校していた。保護者不在で下校した子供の安全確保をどうするのか。
首都直下型地震が襲ったら、建物倒壊や火災が多発する。通学路が安全とは限らない。停電などインフラも被災するだろう。
遠くから通う子供に火災が発生した通学路を戻らせるわけにはいくまい。近くに避難所があればそちらに行く方が安全だろう。子供の年齢によって判断力も違う。
対策は家庭で決めるしかない。通学路や自宅で被災したら、放課後の塾や休日のクラブ活動で被災したらどうするのか。一時的に身を寄せられる居場所はないのかなど具体的に話し合おう。
被災時は子供自身の判断も求められる。日ごろの話し合いは、考える力を養う一助になるはずだ。そこから防災は始まる。
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