夏は子どもたちの水遊び、秋は芋煮会でにぎわう。国土交通省が管理する百六十五の河川の水質調査で、日本一になった福島市の荒川は、市民にとても身近な存在である▼吾妻連峰を源にして福島市内を流れ、阿武隈川に合流する。水の汚れの程度を示す数値の年間平均値を比較した調査で二〇〇七年から二年続けての日本一。〇九年は十位に下がったものの、昨年の調査で二年ぶりに首位に返り咲いた▼お盆すぎの昼下がり、太陽の光線が美しく反射する荒川沿いを数時間歩いた。猛暑なのに川遊びをする子どもはいなかった。散歩する人にも会わない。ヤマメやハヤを釣る人の姿もなかった。福島第一原発の事故後、川から人影が消えた▼上流には、調べ物ができる資料館がある。例年の夏休みは、虫捕りや川遊び、宿題を片付けるために多くの小中学生が訪れるが、今年はほとんど姿が見られなかったという▼福島県の人口は七月までに約二万七千人減った。故郷の荒川を愛する福島の女性は放射線量に関する政府や県の説明が信じられない。「紙を配って調査をするって、私たちはモルモットなんですか?」。静かな口調が突き刺さる▼福島市の小中学校ではきのう、二学期が始まり、放射線の線量計が教室で配られた。「いってきまーす」「線量計持ったの?」。こんな会話が日常になるのかと思うとやり切れない。