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9月1日付 編集手帳

 寺山修司は詠んでいる。〈言い負けて風の又三郎たらん(ねが)いをもてり海青き日は〉。口論をして友達との遊びの輪を離れ、一人ぽつんと海を見ている歌だろうか◆少年のいくところ、風が窓を鳴らし、木々を揺らす。東北地方の小学校を舞台にした宮沢賢治『風の又三郎』の主人公、同級生たちから「風の化身」とも「風神の子」とも(うわさ)される三郎少年はたしかに、どこか謎めいた“孤影”を身にまとっている◆夏休みの明けた9月1日、風を連れて小学校に転校してきた三郎は、山の木々を騒がせてまた転校していく。『風の又三郎』は、きょうから12日間の物語である◆抒情(じょじょう)をたたえた寺山の一首がそうであるように、その年頃の少年少女にとっては孤独の影も思春期の証しであるにしても、父親や母親を亡くして味わう孤独感はまた別だろう。この震災で多くの遺児が生まれた。ずっと無口になり、ひとりぼっちで「風の又三郎たらん希い」に身をゆだねている子供たちがどこかにいるかと思うと、胸が痛む◆「ドジョウ」でも「雪だるま」でも、表現は何でもいい。野田さん、血の通った政治を一日も早く。

2011年9月1日01時26分  読売新聞)

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