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天声人語

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2011年9月1日(木)付

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 新首相の野田さんには、好きな3人の小説家がいる。司馬遼太郎、藤沢周平、そして山本周五郎。3人の小説には、夢、矜持(きょうじ)、人情という、政治家に必須な資質が凝縮されているからだ▼その一人、藤沢の随筆に、「駄作」に触れたくだりがある。たとえば短編の場合、「気合に欠けたり、うっかり最初のボタンをかけ違えたりすると、最終的に読むに堪えない駄作が出来上がって来るというわけです」。あの名手にして反省は多い▼野田政権は名作と咲くか、駄作としぼむか。気合は十分と見るが、問題は最初のボタンだろう。小沢氏に近い輿石(こしいし)氏の幹事長起用は「両刃の剣」との見方がもっぱらだ。党内融和を最優先した人選だが、かけ違えはないか▼民主党の内紛にも増して、そもそも世間には「小沢氏的なもの」への嫌気(いやけ)がある。幹事長は「人事とカネ」を握る。小沢さんは機嫌を直すにせよ、そんなことで動いたり止まったりする政治への旧弊感は、やはり否めない▼聞けば輿石さんは、野田さんに「どじょう」の詩句を教えた人だという。泥臭さで売る「どじょう宰相」だが、ものの本には、食べやすくした「骨抜きどじょう汁」が江戸で人気を呼んだとある。柳川鍋のルーツらしいが、そうならぬよう注意願いたい▼やはり藤沢の随筆にきびしい一文がある。「政治というのは、声が高いわりには非力で、人間を本当に幸福にしたことなどなかったのではないか」。読むに堪えない駄作短編でない、名作政治を切に望むが。

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