「君子豹変(ひょうへん)」の意味を漢詩好きの海江田万里経済産業相は、「本来は、前向きで、積極的な変化の場合に使われる」ほめ言葉であると自著で解説している。政治家が前言を翻すのは「朝令暮改」が正しいと説いた▼小沢一郎元代表の支持を得るために、持論を曲げたことが朝令暮改と映ったのだろうか。民主党代表選で一回目の投票でトップに立った海江田さんは、決選投票で野田佳彦財務相に敗れ去った▼なんとも奇っ怪な代表選だった。国民が最も関心を持っている原発問題やエネルギー政策の議論は深まらず、陰の主役である小沢氏との距離感ばかりが測られる▼その小沢氏も、原発を今後どうするのか自分の考えは明らかにせず、経産省が最も首相にしたい海江田さんを支持した。震災復興と原発事故対策の真っただ中、ここまで内向きの抗争に没頭できる民主党の議員心理を不思議に思う▼かつて民主党が自民党を批判していた「たらい回し」の結果、首相になるのは財務省の「組織内候補」ともやゆされる野田さんだ。野田さんは持論の増税路線を突っ走り、停止中の原発の再稼働もあっさり容認するのだろうか▼はっきり言おう。総選挙の洗礼を受けていない首相にこんな重要なことを決める資格はない。野田さん。ここは大連立ではなく、君子豹変して、衆院を解散して国民に信を問うのが筋ではないですか。