HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19868 Content-Type: text/html ETag: "50dfd6-4831-e62fc640" Cache-Control: max-age=2 Expires: Wed, 31 Aug 2011 03:21:39 GMT Date: Wed, 31 Aug 2011 03:21:37 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2011年8月31日(水)付

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 新しい首相の誕生とともに震災後の「特別な夏」がゆく。政治の停滞の中、それでも花火は上がり、祭りの輪は広がり、人は前を向く。鎮魂と祈りの8月の言葉から▼戦後66年、なお多くの戦死者の遺骨が戻っていない。父親が硫黄島で没した広島県の井上忠二さん(77)は島への訪問が30回を超す。「国が戦場に出したなら、帰さにゃいけん。全員連れて帰るまで、わしの戦争は終わらない」。各所の戦地に残された遺骨は113万体にのぼるという▼岩手県大槌町の岩崎範子さん(35)は家業のタクシー会社が津波で流され、父親が震災後に他界した。だが再出発し、自らも2種免許を取って運転手に。「町の人たちと車で再会できることが一番うれしい。いつまでも廃虚の街ではなく、建物の間を走りたい」▼さいたま市の節句人形の職人さんらが、震災で亡くなった人を偲(しの)ぶ「おもかげ雛(びな)」を作っている。井藤仁さん(70)は「表情には職人の心の内が出る。まさに職人の魂を込めた世界に一つだけの贈り物」。職人の感性で、人形に故人の面影を残す▼ドキュメンタリー映画監督の海南友子(かな・ともこ)さん(40)。原発禍の取材を進めるさなかに自らの妊娠が分かった。「水を飲み、大きく息を吸うたびに赤ちゃんへの影響が心配になる。取材した母親たちの気持ちはこういうものだったのかと実感した」▼朝日歌壇に福田万里子さんの〈気温ならすぐに実感できるのに体感できぬミリシーベルト〉。野田政権の原発政策は、どちらの方向を向く。

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