民主党代表選がきょう行われる。菅内閣の失政を教訓に、国民のための政策実現に向けて再生を期す重要な選択だ。代表選びを委ねられた党所属国会議員は国民の立場で一票を投じねばならない。
慌ただしい選挙戦だった。代表選が告示されたのは菅直人首相による正式退陣表明の翌二十七日。日本記者クラブ主催の共同記者会見、党主催の討論会を経て、きょう二十九日にはもう投票だ。
五人の候補者間で、復興財源の捻出方法や消費税率の引き上げ、自民党との大連立、党員資格停止中の小沢一郎元代表の処遇などをめぐり、おぼろげながら姿勢の違いが見えてはきた。
しかし、案の定時間が足りず、社会保障の将来像や外交・安全保障、脱原発依存に向けたエネルギー政策など「国のかたち」とも言える基本政策について、議論が深まらなかったのは残念である。
選挙戦は、党内最大グループを率いる小沢氏や鳩山由紀夫前首相が支持し、基礎票で勝る海江田万里経済産業相を、前原誠司前外相ら四候補が追う展開だという。
態度未定も百人程度に上る。一回目の投票でどの候補も過半数に届かず、上位二候補の決選投票になる可能性もある大激戦だ。
にもかかわらず国民の間には、新しいリーダーが選ばれるという高揚感が全くない。
これは、党員・サポーターに選挙権が与えられず、国会議員だけで選ぶことと無縁ではなかろう。
一政党の代表とはいえ、首相となるのはほぼ確実だ。できる限り民意を反映することが望ましい。
代表選による政治空白を避けるという意図は分からなくはないが、任期途中の代表選の在り方については検討の余地がある。これは自民党も同様である。
今回、一票を投じる民主党議員の責任は重い。候補者の主張などお構いなしに、グループ単位で多数派工作に興じたり、実力者の意向を重視する「内向き」の選挙に終始すれば、民主党離れだけでなく、政治離れをも加速させる。
今、国民が政治に求めるのは、与野党がともに衆参ねじれを乗り越える知恵を絞り、国民のための政策をより多く実現することだ。新代表はその先頭に立ち、全民主党議員がそれを支えねばならない。代表選が新たな政争の出発点になるなら、うんざりだ。
国民の側に立って一票を投じることができるのか。代表選では候補者だけでなく、民主党議員の常識も問われている。
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