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民主党はきょう、次の首相になる新代表を選ぶ。選挙戦は、おとといの告示から実質50時間ほど。これで日本のかじ取り役を決めること自体が、首相の軽さを象徴しているように見えて[記事全文]
戦後最高値圏の1ドル=75円台をにらんで円ドル相場の一進一退が続いている。輸出企業からは悲鳴が聞こえるが、背景に欧州の財政危機や米国景気の失速懸念という世界経済の構造的な力学が働くだけに、単[記事全文]
民主党はきょう、次の首相になる新代表を選ぶ。
選挙戦は、おとといの告示から実質50時間ほど。これで日本のかじ取り役を決めること自体が、首相の軽さを象徴しているように見えてならない。
論戦を聞いて、私たちが最も疑問を抱いたのは海江田万里経産相だ。脱原発に疑問を呈していたのに、公約に「40年以内に原発ゼロをめざす」と書いた。環太平洋経済連携協定(TPP)参加問題では「国を開くのが歴史の必然」と言っていたのに「慎重に検討」に転じた。
きのう海江田氏は、その理由を支持議員に求められたからだと認めた。小沢一郎元代表のグループなどの意向に沿いたい気持ちはわかるが、ともに日本の将来像に直結する問題だ。しかも閣僚として担当した課題で、これほど主張が変わるのでは、政治家としての信念があるのかと首をかしげざるを得ない。
子ども手当の見直しなどを約束した自民、公明両党との3党合意を、「新執行部が継続か修正か白紙か決めるのがいい」と述べたのにも耳を疑った。自公両党から「背信行為だ」と責め立てられ、いきなり国会審議が立ち往生しないか。
鹿野道彦農水相は「ただひとつ、党を一つにすることが私の役目」だという。確かに民主党の足並みの乱れは目を覆うばかりだ。だが、それは党内の問題であって、国のリーダーの使命ではなかろう。
どのグループにも属さない馬淵澄夫前国交相の主張は明快だった。ただ、金融緩和をすれば景気が回復し、税収が増え、増税も考えられるというシナリオは疑問だ。将来にツケを回すだけにならないか。
少子高齢化や人口減少といった「日本の宿痾(しゅくあ)」を指摘したのは、前原誠司前外相くらいだ。それは適切だが、財政出動などの「最後の大盤振る舞い」で乗り越えようと唱えたのには驚いた。そんな余裕があるのか。借金の山を築いた過去の政権と同じ過ちを繰り返さないか。
野田佳彦財務相は、欧米で国の借金が経済不安を招いていることを指摘し、社会保障と税の一体改革の先送りに警鐘を鳴らした。厳しい現実への対応を求める姿勢は評価する。ただ、国民に負担を強いるならば、その先に明るい日本をつくる展望も示してほしかった。
これでは、消去法で選ぶ民主党の国会議員も多いだろう。
決選投票になった場合の判断基準は、政権交代の歴史的な意義をみすえ、現実の政治を前へ進められる人物かどうか、だ。
戦後最高値圏の1ドル=75円台をにらんで円ドル相場の一進一退が続いている。輸出企業からは悲鳴が聞こえるが、背景に欧州の財政危機や米国景気の失速懸念という世界経済の構造的な力学が働くだけに、単純な解決策は見当たらない。
市場の関心が市場介入や金融緩和に集まるなか、財務省が新たな円高対策を打ち出した。1兆ドルを超す外貨準備のうち1千億ドルを国際協力銀行を通じて民間に供給し、海外企業の合併・買収(M&A)や資源権益の獲得を支援するのが柱だ。
外為市場の巨大な資金のうねりの前には非力だ、との見方もある。だが、外貨準備をいたずらに米国債の購入で塩漬けにせず、日本を取り巻くマネーの流れと経済構造の変革につなげ、円高圧力を緩和しようという方向性は評価すべきだ。
円高というと、企業の海外移転→国内空洞化→雇用減と単線的にとらえがちだ。
しかし、もともと日本経済は、新興国の台頭など「世界の多極化」に置いてけぼりを食わないための対応が待ったなしだった。すでに拡大している海外M&Aにはこのような意味合いが大きい。
ここは、円高のプラス面を生かしてグローバル化を進め、その果実を国内に還元していく「拡大均衡」を目指したい。
今年の経済財政白書も、海外展開の拡大を考える企業は国内雇用も拡大させる傾向があると指摘している。海外拠点を支えるには国内でも人材の強化が必要だからだと見られる。
政策面でも、海外投資や人材育成などを支援し、拡大均衡への流れが幅広く進むよう努めるべきだ。特に中堅・中小企業が人材面で国際化のハンディを負わないよう目を配りたい。中小企業は成長期の雇用吸収力が大きい。中小企業のテコ入れは地方の活性化にもつながる。
国際協力銀行は地方銀行と提携し、地方企業の国際展開への支援も広げている。このチャンネルもうまく生かしてほしい。
為替相場で政府・日銀が投機筋の行き過ぎた動きをたたくことは大事だ。首相交代が政治空白と取られる隙も与えてはいけない。ただ、日本単独の介入には限界があり、経済が苦しい欧米が協調介入に冷淡という構図が定着している。
欧米との協調の糸口を作るうえでも、外貨準備を欧州全体の財政安定のために使うといった戦略的な活用に工夫の余地があるはずだ。あらゆるアイデアを俎上(そじょう)に載せ、手詰まりを打破したい。