HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 27 Aug 2011 03:05:50 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:菅首相退陣表明 失政を省みて、前へ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

菅首相退陣表明 失政を省みて、前へ

 菅直人首相が退陣表明し、民主党は新代表選びに入った。各候補は菅内閣の「失政」を教訓に、国民のための政策実現に向けて前に進まねばならない。

 あなたの近くに、言うことは立派だが、全く実現できない人がいたらどう思うだろう。軽蔑こそすれ尊敬などしないのではないか。

 ましてやそんな人物が国家行政のトップに立ったのなら、国民が幸せになることなどあり得ない。

 そんないら立ちが支配した二年間と言って過言ではない。この不幸な時代に終止符を打てるのか。今回の代表選の意味は、この一点に集約されると言ってもいい。

 ◆政策次から次へと

 菅氏は二十六日、退陣表明した党両院議員総会で「厳しい環境の下で、私自身はやるべきことはやったと考えている」と述べた。

 これに先立つ二十三日の参院委員会では「首相を辞すると決意したのは、何か間違ったことをやったから責任をとるということは全くありません」と語っている。

 首相辞任に至ったのは、東日本大震災や東京電力福島第一原発事故への対応をはじめ、すべきことをできなかったのが理由だ。それは、間違ったことをしたのと大して変わらない。

 今年六月の辞意表明以来、「脱原発依存」を打ち出すなどして政権延命を図ってきたが、菅内閣を評価しない国民との認識の差が広まっては、首相の座を去るのもやむを得まい。

 約一年三カ月前の内閣発足時、菅氏が実現を目指すと語っていたのは強い経済、財政、社会保障を一体で実現する「第三の道」であり、「最小不幸社会」だった。

 その直後の参院選では消費税率引き上げを含む税制改革と、その前提としての無駄の削減を打ち上げ、民主党が惨敗すると、国会議員自身が身を切るとして、衆参両院での議員定数削減を指示した。

 ◆首相就任が目的に

 昨年九月の党代表選では「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と訴え、小沢一郎元代表を破ると「約束したようにノーサイド」と党内融和に努める姿勢を強調した。

 野党との関係では「熟議の国会」を掲げ、丁寧な説明で野党の合意を得たいと語った。

 首相就任後に打ち上げたこれら政策・政権運営方針のうち、菅氏自身が熱意を傾け、やり遂げたことが一つでもあっただろうか。

 大震災があったとはいえ、緒にすら就いていないものがほとんどだ。思い付きで発言し、実現困難と悟ると次の政策課題に乗り換える。わずか一年余りの間の出来事だというのに、その多くが人々に忘れ去られてさえいる。

 菅氏がかつて胸を張った「有言実行内閣」は、影も形もない。

 これでは菅氏が首相として何をやり遂げたかったのか、見えてこないのも無理はない。菅氏には首相に就くこと自体が「目的」であり、政策実現のための「手段」ではなかったということだろう。

 指摘するまでもなく首相は国家行政のトップだ。部下の官僚を使いこなし、国民のための政策を実行していくことが仕事である。

 しかし、政治主導を取り違えた菅氏は官僚と敵対するばかりで、官僚組織の能力を十分引き出せなかった。トップに立つ資質を明らかに欠いていた。

 もっともこうした病理は、何も菅内閣に始まったことではない。

 前内閣は、鳩山由紀夫前首相自身の「政治とカネ」と、米軍普天間飛行場の沖縄県外・国外への移設公約が実現できずに自壊した。その反省に立ったはずなのに、有言不実行の政権が続いたのはどうしたことか。

 政権交代の原動力となった、国民との契約であるはずのマニフェストですら見直しが進んでいる。

 岡田克也幹事長は二十六日の記者会見で、実現できていない政策がある理由に「政策の必要性や実現可能性について、マニフェスト作成時に検討・検証が不十分な部分があったこと」を挙げるマニフェストの中間検証を公表した。

 これでは国民がマニフェストという疑似餌に釣られ、民主党に政権を託したことにならないか。かつて菅氏が自民党政権に投げかけた「やるやる詐欺」という批判が自らに跳ね返る。

 ◆「小沢」論じる不幸

 代表選ではまず、どの候補が政策実現の熱意と工程表を持つかを見極めたい。どうやって党内をまとめ、野党の協力を得るのか。どんなに素晴らしい政策でも、実現できなければ画餅に帰すからだ。

 その上で、二十九日の投票日までの間、討論会などを通じて各候補の政策、どんな国づくりを目指すのかを吟味したい。

 各候補が党員資格停止中の「小沢詣で」に励み、小沢氏が誰を推すかも注目された。いまだに「脱小沢」か「親小沢」かを論じなければならないのは不幸である。

 

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