HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 24 Aug 2011 01:06:03 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:江戸から明治にかけて仙台に「仙台四郎」という名の人物がいた…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 江戸から明治にかけて仙台に「仙台四郎」という名の人物がいた。いつもにこにこ笑っていて、立ち寄る店は必ず繁盛するといわれていた。ずるい人や意地悪な人は大嫌い。いくら招かれても見向きもしない店に、福は来なかったと伝えられる▼商売繁盛の「福の神」として、仙台では今も、四郎さんの写真や人形を神棚やレジの横などに置く商店や飲食店が多い。その四郎さんの人形を思いがけない場所で見掛けた▼鉄骨だけが残る宮城県南三陸町の防災対策庁舎に近い「千葉のり店」は今月上旬にプレハブ小屋で営業を再開した。ほとんどの家屋が流失した町の中心街で、他に営業しているのはガソリンスタンドしかない▼店も家も工場も流されてしまった。「命も助かったけど、借金も助かった」。少しおどけた千葉ひろ子社長(61)と妹の公子さん(58)の口調には、約五カ月ぶりに店を再開できた喜びがにじんでいた▼かつての顧客が車で買い物にやって来る。三月十一日以来、散り散りになったご近所の消息を知ることもある。心苦しいのは倉庫も失い、品物をたくさん置けないため、すぐに売り切れてしまうことだ▼机の上に、四郎さんの小さな人形がちょこんと座っている。友人が届けてくれたという。店の再開は、何もかも失った町に灯(とも)った希望だ。試練は続くだろう。でも大丈夫。福の神も見守ってくれる。

 

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