HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 47851 Content-Type: text/html ETag: "f146f-137d-7b8a4040" Expires: Tue, 23 Aug 2011 03:22:17 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Tue, 23 Aug 2011 03:22:17 GMT Connection: close 8月23日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


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8月23日付 編集手帳

 幕末の歌人、橘曙覧(たちばなあけみ)はうたっている。〈たのしみはまれに(うお)煮て児等(こら)みながうましうましといひて食ふ時〉。一家団欒(だんらん)の食卓に、これが似合う、似合わない、といった料理の区別はないにしても、家族が身と心を寄せ合う感じでは「魚」に一票を投じる人が多かろう◆煮魚であれ、焼き魚であれ、路地に漂う匂いに、ついつい家路に向かう足が速くなった経験は誰にもある。これから秋にかけて、家の灯が恋しくなる匂いはサンマの独壇場かも知れない◆被災した岩手県宮古市の宮古港に、きのう、本州では今シーズン初となるサンマが水揚げされたという◆写真で見れば、網から出て銀色のほとばしる光景はいつもの通りだが、記事には胸を突かれた。水揚げした漁船(福島県いわき市)の通信長(62)は津波で家を流され、妻と息子2人を亡くしている。家族のぬくもりから、団欒の笑顔から最も遠く離れた人たちの手を経て、今年はあの人恋しい匂いが食卓に届く◆〈荒海の秋刀魚(さんま)を焼けば火も荒ぶ〉(相生垣瓜人(あいおいがきかじん))。津波に荒れた海のことはサンマたちも知っていよう。荒ぶる火もまた、供養の炎に違いない。

2011年8月23日01時21分  読売新聞)

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