アフリカ東部ソマリアで深刻な飢饉(ききん)が発生し、餓死者が出て多数の難民が隣国に流出している。内戦が続いて援助物資が十分に届かず、特に体力の弱い、幼い子どもたちの命が失われている。
国連はアフリカ東部が過去六十年で最悪の干ばつに見舞われ、ソマリアでは約三百七十万人が食糧不足に苦しんでいると訴えた。
農民は耕作も牧畜もあきらめ国境を越えるが、難民キャンプは飽和状態だ。ケニアやエチオピアなど周辺四カ国を含めると、千三百万人分の食糧支援が必要という。
ソマリアは二十年間内戦が続き暫定政府の統治は首都モガディシオの一部にとどまる。武装した住民が海賊となって各国の船舶を襲撃するなど、暴力と略奪が繰り返され「破綻国家」と呼ばれる。
南部ではイスラム武装勢力アルシャバーブが住民を抑圧し、国際テロ組織も潜伏する。西欧文化を目の敵にして国連機関の活動を妨害し、時には援助物資に「税金」をかけるので、飢饉が最もひどい南部地域には支援が届かない。
飢饉は長期の内戦が起こした人災の側面もあるが、犠牲になるのはいつも社会的弱者だ。英国のミッチェル国際開発相は首都を視察し、「十分な国際支援がないとソマリアで子ども四十万人が餓死する恐れがある」と警告した。清潔な飲み水がなく、コレラ感染者が急増しているという。
世界食糧計画(WFP)は「東部アフリカでは十五ドルあれば、一人、一カ月分の食事が賄える」と訴える。日本政府は五百万ドルを拠出した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はキャンプを設営し、国連児童基金(ユニセフ)は子どもに栄養強化食品を配り予防接種をしている。
ソマリア国内での援助活動には現地の治安維持が不可欠だ。首都ではアフリカ連合(AU)諸国の軍隊が平和維持活動を展開しているが、武装勢力の妨害と対抗するには、装備と資金面で各国の支援が必要になる。
事態が安定したら、難民の本国帰還を進めなくてはならない。受け入れ国の負担軽減だけでなく、放置された土地の荒廃が進めば再び干ばつが起き、飢饉が繰り返されるからだ。
日本は大震災を受け、欧米は金融不安に直面しているが、アフリカの飢えを救う力はあるはずだ。先進国としての責務である。
この記事を印刷する